抄録
芝草害虫を防除するにはその芝草地に発生する害虫の種類と発生経過を熟知して, 防除の適期に合理的な処置を講ずる必要がある。著者らは芝草害虫の探索のパターンを作る目的で, 4つのゴルフ場の芝草地に予察灯を設置して, 誘殺される害虫の種類と発生消長について調査した。
裾野地区 (東名) ではガ類としてシバツトガ, スジキリヨトウの発生が非常に多く, カブラヤガ, タマナヤガも少数ではあるが誘殺された。コガネムシ類ではマグソコガネが最も多く, ヒメコガネ, クロコガネの順でスジコガネも比較的多数誘殺された。また, 芝草の重要害虫であるガガンボの一種が多数採集され, その成虫の発生は春秋の2回であった。誘殺された害虫の種類は4地区の中で最も豊富であった。
浜岡地区ではチビサクラコガネが最も多く, ヒメコガネ, コフキコガネの順であった。チビサクラコガネは芝草の重要害虫である。シバツトガ, スジキリヨトウの誘殺数の少ないのは, これらの害虫防除を重点的に行なっているためであろう。この外, フタテンツヅリガが多数誘殺された。
箱根地区では最も誘殺数の多いのはスジコガネで, 次はヒメコガネ, サクラコガネの順であった。これは付近にスジコガネの成虫の餌植物である, ヒノキ, スギ等が多いためであろう。スジキリヨトウは多数採集されたが, シバツトガの発生は僅少であった。これはこの芝草地の標高が高く, 気温が低いためこの虫の発生を抑圧しているためと考えられる。
静岡地区 (大谷) ではシバツトガの誘殺数が最も多く, 次はスジキリヨトウ, セスジカクマグソコガネ, セマダラコガネ, コイチャコガネの順であった。コガネムシの種類と発生量が少ないのは, 芝草地の付近にこれら成虫の餌植物が少ないことによるものと考えられる。