抄録
本研究の目的は,PIV計測法を用いて泳者手部周りの非定常流れ場を可視化し,水泳スカーリング動作の推進メカニズムの知見を得ることである.
元競泳選手1名が本研究に参加し,回流水槽中でスカーリング動作を行った.PIV計測により,泳者左手周りにおける200枚の時系列粒子画像が瞬時に取得され,連続する2枚の粒子画像から流れ場の粒子速度ベクトルと渦度が計算された.
スカーリング動作アウトスカル局面において泳者小指近傍に前縁渦が観察され,手部の移動方向が変化するアウトスカルからインスカルへの遷移局面において,その渦が手部から放出されているようであった.また,遷移局面後には手部周り循環の回転方向の変化が観られた.本研究の結果から,スカーリング動作を行っている泳者は,手部周りの循環と放出された渦による運動量変化によって推進力を生み出していることが示唆された.