美術教育学研究
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〈表現者/当事者〉相互のコミュニケーション的行為の可能性
―生活世界と他者経験をめぐる危機を内破する知に関する序論的考察―
清家 颯
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2021 年 53 巻 1 号 p. 121-128

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抄録

本論は,個の表現行為のひろがりが活動を応答的・対話的にすると捉える視座に立ち,子どもが他者とおこなう自己探究的な制作過程のコミュニケーション的行為に生活世界と他者経験をめぐる危機を内破する可能性の一側面があることを示した。現在にまで持ち越された美術教育に関する諸課題と現代社会の状況を捉えて,子どもの生きづらさに繋がる切実な課題の一因とその環境の変容状況に着目した。この状況の打破のために,当事者性を持ちながら,他者への想像力を働かせて関われるようにする教育的方途の必要性が示された。「自分の感じ方・考え方」で経験したことを言葉等を駆使してコミュニケートし,「語りがたい経験」を分かち合える場を自分たちで工夫して創出できる表現活動としなければならない。そこで起きるやり取りが契機となり,相手の全体性を深く知るきっかけとなる他者経験へとひらかれていくことが展望されるからである。

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© 2021 大学美術教育学会
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