2021 年 53 巻 1 号 p. 321-328
本研究は,香川県高松市にあるNPO法人アーキペラゴが行なっている「高松市芸術士派遣事業」での実践から,その事業における芸術士®(以下,芸術士)の役割や課題について見ていくことにする。「高松市芸術士派遣事業」とはイタリアのレッジョ・エミリア市の幼児教育を参考にした独自の事業である。そこで,芸術士を対象としたアンケート調査から芸術士が活動する上で感じている思いや疑問から,保育現場での実態を明らかにする。芸術士の活動は子どもの学びや興味によって活動内容を臨機応変に選択している。これは,子どもの関心のある出来事や子どもの声を聴き子どもの創造性を広げる題材につながる。それらのことが,子どもの学びを獲得し,保育の質を向上していく手立てとなる。このような芸術士の役割と意義を保育者,保護者,行政と共有し,一体となって取り組んでいくことが子どもの表現を成り立たせるためには必要である。