2021 年 53 巻 1 号 p. 313-320
本論は,造形遊びの視点から幼保小間の接続の課題について検討するものである。造形遊びは,幼児教育と小学校教育の双方において一般的で日常的な用語である。しかし,指し示す意味内容が異なることから,幼児造形教育と小学校図画工作科教育の接続を見直す際の重要な鍵言葉になると考えられる。本論では,基礎研究の初期段階として,幼児教育関係告示文と『小学校学習指導要領解説図画工作編』の記述を中心に吟味し,幼保小間の接続や連携の問題の所在を模索した。その結果,①小学校教育関係者が幼児教育の造形遊びの実態を把握することが困難であること,②小学校教育における「造形遊び」独自の教育効果や他の教育活動との関連性を再検討する余地があること,③生活科の設立により,包括的な幼保小接続は考慮されているが,その一方で,分析的・具体的な視点が不十分であること,が課題として見出された。