美術教育学研究
Online ISSN : 2189-3586
Print ISSN : 2433-2038
ISSN-L : 2433-2038
「子どもの絵」を〈見る〉ことに関する考察
―初等教科教育法(図画工作)の授業実践を通して―
井ノ口 和子
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 53 巻 1 号 p. 33-40

詳細
抄録

本研究は,図画工作科における鑑賞活動のあり方を探る一つの手がかりとして,学生が子どもの絵をどのように見ているのかの特徴を探ることを目的としている。分析対象は,図画工作科の教科書に掲載されている5作品に対する学生の記述である。「主題」,「材料」,「形・色」,「造形行為」,「共感」の5つの要素に関する記述を抽出し,分析・考察した結果,以下の特徴を確認した。第一に,材料や中心に表されたテーマへの着目に比較して,色・形,造形行為などの造形的な視点に着目した〈見る〉行為が確立していない。第二に,作者の意図を理解しようとする姿勢が強く,鑑賞者自身の〈見る〉視点や共感的な態度が弱い。作者の表現したいテーマや意図を理解しようとするだけではなく,造形的な思考や行為について着目する〈見る〉経験を自らが重ねることを通して,子どもの〈見る〉を豊かに広げることができる指導の検討が課題である。

著者関連情報
© 2021 大学美術教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top