植生学会誌
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原著論文
筑波山のスギ・ヒノキ人工林におけるコケ植物,シダ植物,顕花植物の分布と微地形との関係
杉村 康司沖津 進
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2009 年 26 巻 1 号 p. 33-48

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抄録

  1. 茨城県筑波山のスギ・ヒノキ人工林を対象に,コケ植物の分布と微地形との関係を明らかにするため,植生調査を行った.コケ植物の分布と顕花植物ならびにシダ植物の分布を比較し,それらをもとにスギ・ヒノキ人工林内におけるコケ植物の地形分布と種多様性における微地形の生態的意義を検討した.
  2. 微地形条件に対応した種の割合は,コケ植物,シダ植物,顕花植物の順に多かった.特に,谷底面のみに出現した種はコケ植物が多かった.微地形との対応関係はコケ植物,シダ植物,顕花植物の順に明瞭であった.
  3. 各微地形のコケ植物,シダ植物,顕花植物の平均出現種数は,頂部平坦面,頂部斜面,上部谷壁斜面,下部谷壁斜面,麓部斜面,谷底面の順に増加していた.各微地形間における有意差は,コケ植物,シダ植物,顕花植物の順に明瞭であった.
  4. コケ植物の地形分布は,顕花植物よりもシダ植物の地形分布と類似していた.5.スギ・ヒノキ人工林における植物の分布は,流路からの距離の違いに伴って谷底面,麓部斜面,下部谷壁斜面,上部谷壁斜面,頂部斜面,頂部平坦面と変化する微地形条件を反映していると考えられた.
  6. スギ・ヒノキ人工林における種多様性の維持にとって,谷底面が最も重要性が高く,谷底面のみに出現するコケ植物種群の役割が大きいことが明らかになった.

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