Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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原著
本州日本海沿岸の砂浜汀線域におけるフジノハナガイと他の二枚貝類の分布
高田 宜武 梶原 直人阿部 信一郎井関 智明八木 佑太澤田 英樹齊藤 肇望月 翔太村上 拓彦
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2015 年 73 巻 1-2 号 p. 51-64

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抄録

砂浜汀線域に分布する二枚貝,特にフジノハナガイの分布パターンを把握するために,本州日本海沿岸の59地点の砂浜において野外調査を行い,砂浜毎に13の環境変数を求めて多変量の回帰分析を行った。調査では,24地点より二枚貝が採集され,うち16地点でフジノハナガイが出現した。得られた12種,664個体の二枚貝のうち,フジノハナガイが86.6%を占め最優占種であった。多変量解析では,二枚貝の在不在,種数,フジノハナガイの在不在と採集個体数のそれぞれを従属変数とする4つの回帰モデルを解析し,変数選択によりAIC最小モデルを求めた。本調査の範囲内では,砂浜長と塩分の効果が4つのモデルで共通して認められ,さらに各モデル特有の変数が抽出された。人為的要因では護岸等の建設とそれによる砂浜の断片化が二枚貝の存在と種多様性に負の影響を与えると推測された。フジノハナガイについて,在不在モデルと個体数モデルで有効な変数のセットが異なった。フジノハナガイは繁殖個体のほとんどが1歳だと考えられるので,加入過程と生残過程のそれぞれに影響する環境要因が個体群の安定的な維持に重要であると考えられた。

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© 2016 日本貝類学会
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