2019 年 3 巻 2 号 p. 19-29
本稿は、平成29年告示の幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の三法令で新たに示された、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」(10の姿)が、私製解説書(所管官庁が編集した公式解説を除く市販の解説書籍)において実践例と共に示されることで、10個の能力として誤解されていることを指摘するものである。三法令及び公式解説において、10の姿は「知識及び技能の基礎」等の三つの資質・能力が相互に関連し合って育っている5歳児後半の子どもの姿とされており、保育者が保育実践をふり返る視点として位置づけられている。これに対して、私製解説書では、実践例と共に10の姿が示されることで、10の姿が育まれるべき“10の能力”と見なされ、各項目に対応した保育実践があると誤解されている。こうした誤解は、保育実践のふり返りの視点としての10の姿を、保育実践のねらい、つまり目標として位置づけることから生じている。