抄録
グルタチオンペルオキシダーゼ(Glutathione peroxidase;GPx)はSOD,catalaseなどと共に生体内での主要な抗酸化酵素であり,細胞内外に広範に分布している.GPxの最大の特徴はその活性中心に必須微量元素セレン(Se;selenium)を含むことである.Seが生体に必須であることは1950年代から徐々に認知され始めており,ヒトでは野菜や食肉からの有機SeがSe源となっている.Se摂取量が低いと考えられる低Se地域の住民に心筋症や大腸癌,乳がんなどが認められ,体内でのSe含有量と発症率が負の相関性を示すことなどが知られている.Seは生体内でセレン含有タンパク質として存在しており,なかでもGPxは最も古くから知られ,比較的詳細な研究がなされている.本稿ではこれまでのGPxに関する研究と,本研究室で得られた知見について紹介する.