ビタミン
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5.ビタミンや食品中の抗酸化物質によるグルタチオンS-トランスフェラーゼの誘導とがんの予防(<シリーズ>バイオファクター研究のブレークスルー : グルタチオン)
土田 成紀佐藤 衛山崎 尊彦早狩 誠
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2002 年 76 巻 11 号 p. 535-543

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抄録
グルタチオンS-トランスフェラーゼ(glutathione S-transferase;GST,EC2.5.1.18)は〓群の分子種(アイソザイム)からなる多機能酵素であり,動物,植物,細菌などに広く分布し,種々の薬剤に対するグルタチオン抱合活性,脂質や核酸の過酸化物に対するグルタチオンペルオキシダーゼ活性,ステロイドホルモンやプロスタグランジンなどに対するイソメラーゼ活性およびジスルフィドなどに対するチオールトランスフェラーゼ(グルタレドキシン)活性の4種類の酵素活性を示す.さらに,一部の分子種は発がん剤,ステロイドホルモン,色素などの結合タンパク質としても働く,GSTの主な機能であるグルタチオン抱合活性は薬物のメルカプツール酸代謝の初発反応として,多くの薬物の解毒に関与する.またGST分子種は反応性にとむシスティン残基を持ち,過酸化水素などの消去に働くとともに,酸化ストレスのシグナル伝達にかかわるプロティンキナーゼに結合し,その活性を制御するなど酸化ストレスの消去やストレス応答における役割が注目されている.ビタミンEや植物中の抗酸化剤などの投与はラットやヒトのGSTを誘導し,発がん剤を解毒することにより,がんの予防に役立つことが示唆されている.本論文では最近見いだされた分子種を含めてGSTの分子多様性について簡単にまとめ,GSTの誘導とがんの化学予防,ストレス応答におけるGSTの役割などについて最近の知見を紹介したい.
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© 2002 日本ビタミン学会

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