抄録
生体分子のランダムな酸化反応は種々の疾患発症につながると受け入れられている。実際、ヒト動脈硬化巣において、フリーラジカル、ペルオキシナイトライト、次亜塩素酸など、複数の酸化種による脂質、タンパク質の酸化変性物レベルの上昇が認められている。その結果、抗酸化物の健康維持、疾患予防に対する有益な効果が期待されている。しかし、これまでの一種あるいは少数の抗酸化物を用いたランダム化比較試験では、再現性良く抗酸化物の有益性を立証することができなかった。抗酸化物の効果は標的の酸化種に依存するため、反応性、選択性の異なる複数の酸化種に対しては、それぞれに対して有効な複数の抗酸化物が必要であることを考慮すると、これまでの介入試験の否定的な結果は当然であったともいえる。本総説では、これらのことについて、動力学的データも用いて考察する。