抄録
日本人の食事摂取基準(以下摂取基準)は、5年ごとに改訂される。食事摂取基準2020年版において、ビタミンDに関して、大幅な変更がなされた。食事摂取基準においては、栄養素に関して、不足回避の指標として、推定平均必要量 (estimated average requirement; EAR)、推奨量 (recommended dietary allowance; RDA)、目安量 (adequate intake; AI)、過剰摂取による健康障害回避の指標として耐容上限量 (tolerable upper intake level; UL) 、生活習慣病の発症予防のために指標として目標量 (tentative dietary goal for preventing life-style related diseases; DG) が定められ、ビタミンDについては目安量が定められている。
ビタミンD欠乏によりクル病・骨軟化症が起こるが、より軽度の不足であっても、骨粗鬆症性骨折など、種々の疾患リスクとなる。以前は、ビタミンDの目安量は、クル病・骨軟化症予防に基づいて定められていたが、2005年版以降、健康人の摂取の中央値に変更された。しかし近年の研究により、ビタミンD欠乏/不足者の割合が高いことが明らかとなり、上記策定根拠は適切ではなくなった。
そこで骨折予防に必要な量(15 μg/日)から皮膚で産生される量(5 μg/日)を差し引いたものを目安量とし 、冬季・札幌における産生量を用いた。耐容上限量と乳児の目安量は、2015年版において変更された。今後の食事摂取基準のためには、早急な 臨床・疫学研究が求められる。