ビタミン
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生体内リン恒常性を維持するビタミン D 作用(特集「ビタミン・バイオファクター研究の新潮流」(第72回大会 若手シンポジウム))
金子 一郎宇賀 穂塩﨑 雄治宮本 賢一瀬川 博子
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2021 年 95 巻 5-6 号 p. 280-285

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抄録
無機リン酸(リン)は生体内で多くの生化学反応に必要であるため、血中リン濃度は一定範囲内に維持されている。低リン血症はくる病/骨軟化症の原因となり、高リン血症は慢性腎臓病(CKD)や透析患者において心血管疾患発症のリスクファクターとなる。副甲状腺ホルモン(PTH)や線維芽細胞増殖因子23(FGF23)は、腎臓でのリン再吸収を抑制することでリン利尿ホルモンとして機能している。活性型ビタミンD[1,25(OH) 2D]は小腸でのリン吸収を促進することに加え、PTHやFGF23の産生調節も行い、生体内リン恒常性を保っている。
FGF23シグナル活性化は、尿中リン排泄を亢進させ、低リン血症性くる病を引き起こす(FGF23関連低リン血症性くる病)。また、ビタミンD依存性くる病では、小腸でのリン吸収抑制に加えて、成長期における尿中リン排泄の亢進が低リン血症の原因となる。近年、FGF23中和抗体(Burosumab)が開発され、腎臓リン再吸収と1,25(OH) 2D産生を改善することでくる病患者に有益な効果を示し、欧米及び日本でFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の治療薬として承認されている。一方、X連鎖性低リン血症性くる病モデル動物を用いた実験では、ビタミンD製剤単独投与でも低リン血症性くる病の症状を改善できることが示された。この作用の特徴は、FGF23が高値を示すにも関わらずリン再吸収の改善がみとめられることである。
CKD患者では、しばしば副甲状腺機能亢進や心血管疾患、骨異栄養症など骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD: 慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常)が出現する。CKDにおける高リン血症および1,25(OH) 2D低下を予防・治療することで患者のQOLや予後を改善することが報告されている。
このように腎臓でのリン再吸収調節は骨ミネラル代謝に極めて重要である。我々は、リンとビタミンD代謝に注目し、疾患の発症および予防を分子レベルで理解することに努めている。
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© 2021 日本ビタミン学会

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