抄録
ビタミンC(アスコルビン酸)は優れた水溶性抗酸化剤であるとともに,さまざまな酵素の補酵素としても機能する.植物はアスコルビン酸を高濃度に蓄積し,私たちヒトにとっての主要な摂取源となる.これまでに膨大な研究が行われてきたにも関わらず,なぜ,そしてどのように植物がアスコルビン酸を高蓄積するかという基本的な疑問は未解明のままである.植物は進化過程において,アスコルビン酸生合成経路およびその利用と再生に関する独自の経路を獲得してきた.これらにより,植物は安全にアスコルビン酸を合成し,とても効果的に抗酸化システムに利用できるようになった.最近,私たちの研究グループでは,1)植物の生育やストレス耐性へのアスコルビン酸濃度の影響,2)植物特異的なH2O2消去酵素(アスコルビン酸ペルオキシダーゼ)の生理学的重要性,3)アスコルビン酸再生の分子機構とプールサイズ維持における役割について詳しく研究を進めてきた.本総説では,当該分野における最近の進展を要約し,上記の基本的な質問への回答を試みる.