抄録
本稿は、落語の「時うどん」と「時そば」のサゲについて調べ、その違いがどのような効果を生んでいるか、考察したものである。現在広く知られている「時そば」では、刻を聞かれたそば屋が「四つで」と答え、四文損しました、というサゲになっている。しかし上方の「時うどん」では、うどん屋は「五つで」と答え、三文損しました、となる。数字としてはわずか一つの違い、現代の時間感覚では約2時間の違いであるが、この違いはなぜ生じて、噺にどのような効果をもたらしているのか、この点を明らかにしたい。
本稿では「時うどん」・「時そば」の成立からその後の英語落語に発展するまでの経緯を確認し、サゲの背景となる江戸時代の時制ならびに貨幣についても述べた上で、一刻の差が示すキャラクターの違いについて考察、「時うどん」では「あほ」と「かしこ」を、「時そば」では「粋」と「野暮」とを対比させていると結論づけた。