雑草研究
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原著論文
イヌホタルイ(Schoenoplectus juncoides)実生の除草剤反応を利用したアセト乳酸合成酵素(ALS)阻害剤交差抵抗性の簡易検定法とその利用による秋田県の発生実態調査
薄井 雄太青木 政晴三浦 恒子内野 彰
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2017 年 62 巻 3 号 p. 126-133

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抄録

アセト乳酸合成酵素(ALS)阻害剤抵抗性イヌホタルイは,作用点となるALSのアミノ酸置換の差異によって交差抵抗性が異なる。本研究では,イヌホタルイの実生の除草剤反応を利用して,アミノ酸置換の異なる抵抗性を簡便かつ迅速に識別する方法(実生検定法)を検討した。イヌホタルイ種子を除草剤水溶液に浸し,実生の生育を観察したところ,第1葉身長において感受性系統と抵抗性系統との間に明瞭な差異が認められた。検定に適した除草剤濃度は,チフェンスルフロンメチルが75 ng a.i./mL,ベンスルフロンメチルが600 ng a.i./mLであった。またプロピリスルフロン170 ng a.i./mLまたはピリミスルファン2700 ng a.i./mLの処理により,アミノ酸置換の異なる抵抗性系統の識別が可能であった。秋田県内のイヌホタルイについて実生検定法を適用すると,3系統が抵抗性と判定された。これは,ポット試験の結果およびALS遺伝子の解析結果とよく一致した。この結果,秋田県内の北部地域にもALS阻害剤抵抗性イヌホタルイが発生していることが明らかとなり,発生地域が全県的に拡大している可能性が示唆された。

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© 2017 日本雑草学会
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