抄録
水深50cmより地下水位10cmまで, 水位を一定にし, 種子と栄養繁殖体を用いてオモダカ属のオモダカとアギナシ, ヘラオモダカ属のヘラオモダカとサジオモダカの生育ならびに繁殖体の形成量を比較し, 水深適応性について検討した。
(1) 栄養繁殖体から出芽したものでは, 水深50cmにおいてオモダカとサジオモダカは抽水葉がみられ, 種子, 栄養繁殖体とも形成されたが, アギナシとヘラオモダカの繁殖体形成は, 大きな繁殖体から出芽した個体に限られた。この差異は繁殖体の大きさと葉柄の伸長可塑性の大小にもとづくものと推察された。
(2) 種子から出芽したものでは水深25cmにおいて, オモダカとヘラオモダカでは種子, 栄養繁殖体とも形成されたが, アギナシとサジオモダカではわずかに栄養繁殖体が残っただけであった。しかし, 非湛水下の高地下水位条件におけるオモダカ属2種の定着は不良で, ヘラオモダカ属2種と対照的であった。
(3) オモダカの塊茎から出芽した場合, やや深水条件の水深15cmを好適水深とした。また, オモダカの種子, アギナシの球茎と種子, ヘラオモダカの肥大株基部と種子, サジオモダカの肥大株基部と種子から出芽した場合, それぞれ水深3cmで生育量, 繁殖体形成量が多く, 水田浅水条件を好適水深とした。