抄録
越冬期のカモ類は夜行性で,日中は安全な湖沼で休息し,おもに夜間,水田等で採食する.目視による観察が難しいマガモAnas platyrhynchos の夜間の行動を明らかにするため,採食地である水田にタイムラプスカメラを設置して調べた.調査は石川県加賀市にあるラムサール条約湿地の片野鴨池周辺において,2019 年12 月15 日から2020 年1 月20 日までの37 日間行なった.撮影は夕方17 時から翌朝7 時までの14 時間のあいだ5 分ごとに行なった.記録されたカモ類はマガモ,カルガモ A.zonorhyncha,トモエガモ A. formosa の3 種で,マガモ以外はまれであった.マガモの行動は採食,背眠,羽繕い,警戒,闘争,飛翔,求愛,その他に分け,画像ごとにそれぞれの行動を取っていたマガモ個体数を数えた.これらのうち採食行動がもっとも多く記録された行動で20-70%を占め,ついで警戒,羽繕い,背眠と続いた.求愛行動は記録されなかった.本研究により,マガモが水田を採食地として夜を通して利用していること,背眠や羽繕いなど体調維持に必要な行動も行なっていることが明らかとなり,越冬期のマガモの生息環境としての水田環境の重要性およびカモ類の保全のために片野鴨池周辺で行なわれている冬期湛水による水田環境の管理が有効であることが示唆された.