湿地研究
Online ISSN : 2434-1762
Print ISSN : 2185-4238
棚田の耕作放棄の過程,および近年の棚田景観と植物相の再生
-静岡県における事例-
下田 路子 稲垣 栄洋
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2012 年 2 巻 p. 15-26

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抄録
水田は日本の耕地で最も広い面積を占め,また最も広い湿地でもある.傾斜地にひらかれた棚田では,耕作条件の悪さや労働力の減少などにより耕作放棄が進んでいる.一方では美しい景観や多面的な機能が評価・認識され,棚田の保全や再生が各地で行われている.棚田の再生事例として,静岡県の2 か所の棚田(石部〈いしぶ〉と倉沢)の変遷と再生事業を紹介した.両棚田では1960 年代まで全域で耕作が行われていたが,その後に耕作放棄が進行した.1999 年に両地域で棚田の再生活動が始まり,景観や生物相がよみがえった.放棄水田の土壌を用いた発芽実験結果は,埋土種子集団が耕作田特有の多様な植物種を含むことと,埋土種子による植物相再生の可能性を示した.
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© 2012 日本湿地学会
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