抄録
国土交通省の自然再生事業によって再生された氾濫原湿地アザメの瀬は,2011 年4 月現在,竣工から約7 年が経過している.アザメの瀬は,計画当初生態的機能を有する氾濫原的湿地環境を再生すること,およびそれら生物と人のふれあいを再生することを目標として整備された.これらの目標の設定および,アザメの瀬の計画立案は,徹底した住民参加により行われており,実現した計画案には,住民意見が強く反映されている.本論では,竣工から5 年間にわたる生物モニタリング調査結果や,竣工後に行われたアザメの瀬の活動について報告するとともに,当初の目的に対しての達成度の評価
を行った.その結果,アザメの瀬では,湿地性の植物の再生や,氾濫原依存魚種の生息産卵も確認されており,氾濫原の生態的機能が着実に再生されつつあることや,環境学習体験などの活動も継続的に実施されており,人と自然のふれあいについても再生されつつあることが明らかとなった.