本研究では,脂肪族系イオン液体であるN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(DEME-TFSI)およびリチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li TFSI)を溶解させたイオン液体(Li DEME-TFSI)のX線光電子分光(XPS)スペクトル測定を行った.それぞれのイオン液体界面についてLi 1s,C 1s,N 1s,O 1s,F 1s S 2p narrowスペクトルの測定を行った.また価電子帯スペクトル(0~40 eV)についても測定を行った.イオン液体の気液界面(十数nm)では,イオン液体の陰イオンとリチウムイオンの濃縮がこれまでの結果から予想された.測定をおこなった結果,試料中には検出下限以下の濃度のリチウムイオンしか存在していないにもかかわらず,Li 1sのピークが確認された.また,F 1sスペクトルでは,リチウムイオンを溶解した試料で,陰イオンのTFSI中のFに帰属されるピーク以外に新たなピークが観測された.この結果から,リチウムイオンが陰イオンと配位しているだけでなく,Li-F結合を形成して界面に溶存していることが明らかになった.またX線照射によるイオン液体界面の変化をLi 1s,F 1s,およびN 1sスペクトルより明らかにした.これらの結果からイオン液体がX線照射により分解し,分解生成物がリチウムイオンと相互作用をすることで界面に濃縮し,本来検出下限濃度のリチウムイオンがXPSスペクトルによって検出されたという結論が示された.