桧の木遺跡から出土した阿玉台式土器は古くから雲母片や花崗岩片の意図的な混和が指摘されている.実際に,桧の木遺跡から出土した阿玉台式土器59点と同遺跡で出土した縄文土器18点中の含有鉱物をXRDで定性し比較したところ,阿玉台式土器のみに固溶体鉱物である黒雲母(K(Mg,Fe)3AlSi3O10(OH,F)2)が含まれていた.すなわち,この阿玉台式土器には黒雲母が混和された可能性が高い.黒雲母のような固溶体鉱物は,産地に応じて固溶比が変化し,それが格子面間隔dに反映されることが期待されるので,起源推定にd 値を応用することができると考えられる.そこで,阿玉台式土器の混和材の起源推定を目指して,黒雲母の格子面間隔dが産地に依存するか否かを検証した.本研究では,産地が異なる黒雲母含有岩石標本14点をX線回折法で測定した.これらの岩石標本に含まれる黒雲母001面のd 値は5つのグループに分類され,産地が異なるにも関わらず,有意差がないものがあった.一方,産出県は同一にも関わらず,d 値に有意な差が見られるものもあった.黒雲母のd値を混和材の起源推定に利用するには,この原因を解明する必要がある.