骨は内部被ばく核種の重要な移行器官とされているが,特に,骨発達の盛んな幼齢期における骨への移行量や骨発達への影響について基礎データが不足している.そこで本研究では,骨微細構造と対応したウラン骨移行評価手法を確立することを目的とし,放射光μCTによるウランL3吸収端(17.17 keV)の前後エネルギー(16.9 keVと17.5 keV,エネルギー差600 eV)での吸収端差分法により,酢酸ウラニルを投与した発達期ラットに対し,大腿骨へ移行したウランの可視化・定量の可能性について検討した.
SPring-8 BL20B2ビームラインにてX線透過画像を撮像し,畳み込み逆投影法により画像再構成し,吸収端前後で画像位置合わせ後,差分画像を得た(ボクセルサイズ2.73 μm/voxel).
分析標準として水溶液標準とヒドロキシアパタイト(HAP)標準を用いた.高濃度ウランにて両標準でウランの不均一な濃集を確認した.これは水溶液では凍結による効果,HAPでは画素サイズを超える粒径サイズによる効果と考えられ,常温下にて,画素サイズ以下の粒径を用いた測定が必要と示唆された.
骨試料では,差分画像の骨領域のヒストグラムをウラン投与群と対照群とで比較したところ,有意な違いを確認できず,ウランの検出には至らなかった.本実験条件下でのウラン検出限界は数万ppmと見積もられた.一方で,再構成画像の骨領域のヒストグラムから1週齢に比べて10週齢ラットは骨密度が20%増加したことを見出した.さらに,数マイクロメートルの空間分解能で骨微細構造の三次元可視化が可能であることを実証した.
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