2022 年 53 巻 p. 175-182
純銅の高温変形における流動応力の温度依存性のメカニズムを探るため,変形中の転位挙動に対し,飛行時間型中性子回折によるその場観察を行った.中性子回折測定結果に対しラインプロファイル解析を行い,転位密度を求めた.転位密度をもとにBailey-Hirschの式を利用した流動応力を求め,力学特性と転位密度との関係を考察した.高温ほど変形中の転位密度が上がりにくい測定結果を得た.これは,高温ほど転位の対消滅を伴う回復が起きやすいことと対応する.転位密度をもとに流動応力を推定すると,流動応力の温度依存性が良く再現された.また,一定温度以上で現れる流動応力の波打ち現象は1012-1013 m-2程度の転位の増減により生じたことが確認された.400℃程度まで温度が上昇するにつれ延性が低下するが,転位密度の低下とともに単位長さ当たりの転位強化量が低下することに起因することと対応する.