2021 年 13 巻 2 号 p. 122-125
わが国では低用量経口避妊薬が避妊法として選択される割合が低いことなど,状況に応じた適切な避妊法が選択されにくい環境がある.人口あたりの人工妊娠中絶数は近年顕著な減少はみられず,望まない妊娠・出産は社会的な問題となっている.2017 年に厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」において,緊急避妊薬の OTC 化について議論がなされたが,性教育の浸透等,課題があることを理由として見送られた.そうした中,「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が改訂され,緊急避妊薬の調剤に関する記載が追記された.この指針において緊急避妊薬を調剤する薬剤師には研修を受けることが求められており,2021 年 7 月末時点で約 9 千名が研修を修了し,厚生労働省が氏名等を公表している.オンライン診療は緊急避妊薬へのアクセスを改善する有効な手段と考えられるが,それを機能させるためには薬局で調剤できるかどうかが鍵となる.現在,コロナ禍における時限的・特例的措置(いわゆる 0410 対応)として,緊急避妊薬の調剤が行われている可能性もあるが,薬剤師が避妊や緊急避妊薬の知識を持ち,薬剤の特性を踏まえ,患者に適切な対応をすることが求められる.