抄録
腰痛発生の危険因子を検討するために5年間のprospective studyを行った.対象は腰痛も腰痛歴もない男女63名 (19~49歳) で, 調査項目は年齢, 身長, 体重, 運動と喫煙の習慣, 椎間板変性 (MRI), および体幹筋力 (E/F比: 等運動性運動にて測定した屈曲ピークトルク値に対する伸展の比) である.5年後に腰痛発生について再調査し, 各調査項目の腰痛発生への寄与を多変量解析で比較した.5年間に腰痛が発生した例は男13例 (39%), 女19例 (63%) であった.偏回帰係数の絶対値はE/F比が男女とも最も大きく (男: -0.40, 女: -0.46), 腰痛発生を予測する最適の因子の組み合わせ (ステップワイズ法) ではE/F比のみが選択され, 男では1.10, 女では1.01未満だと腰痛が発生するという判別式が得られた (的中率: 61%, 70%).屈曲筋力に対して伸展筋力が低いことが腰痛発生に最も寄与していた.