日本養豚学会誌
Online ISSN : 1881-655X
Print ISSN : 0913-882X
ISSN-L : 0913-882X
原著
暑熱環境下の雄豚へのL-カルニチン給与が精液性状に及ぼす影響
池田 周平土井 芙里村岡 和美渡邉 直久王堂 哲佐藤 光夫門司 恭典祐森 誠司
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 45 巻 1 号 p. 10-15

詳細
抄録

L-カルニチン(以降カルニチン)は長鎖脂肪酸のミトコンドリア膜内への透過に必須な栄養素であり,経口摂取によって脂質の異化代謝が亢進することが知られている。暑熱環境下で豚は食欲減退となり,摂取栄養の不足から夏季不妊の症状を示し,特に雄豚では精液性状の低下が問題となる。暑熱環境下におけるカルニチンの給与がこの改善に有効と推察されることから初夏からカルニチンを給与し,晩夏に採取した精液性状をカルニチンの給与されない対照区と比較した。供試した雄豚は生後21~29カ月齢のデュロック種8頭で,対照区には市販種豚用配合飼料,試験区には同一飼料に50ppmのカルニチンを添加して給与した。試験開始前に精液性状を確認し,同等となるように供試豚を4頭ずつ配分した。カルニチンの添加は8月初めから9月末までの2ヶ月間行い,9月上旬と下旬の2回精液を採取し,精液量,精子活力,精子濃度,精子異常率,正常精子数を検査した。試験開始時の両区の精子活力は対照区88.8±3%,試験区86.2±6%であったが,9月上旬には対照区52.5±13%,試験区86.7±3%と試験区が高い傾向(P<0.10)がみられた,9月下旬でも有意差は認められないが試験区が高い値を示した。また,9月上旬に試験区の精子異常率は対照区に比べ低い傾向(P<0.10)がみられた。その他の項目に有意差は認められなかったが,試験区が精子活力,精子濃度,正常精子数で良好な成績を示した。カルニチンを給与することで暑熱環境による体力消耗が緩和され,精液性状が維持されやすかったと考えられた。

著者関連情報
© 2008 日本養豚学会
前の記事 次の記事
feedback
Top