2008 年 45 巻 1 号 p. 16-25
栄養的制御による窒素排せつ量の低減がメタン発酵におけるバイオガス発生量と消化液の性状に及ぼす影響を明らかにするため,アミノ酸添加低タンパク質飼料(低CP, CP : 11.6%)にリンゴジュース粕を添加した飼料を給与した肥育豚から排せつされたふん尿を用いて,中温メタン発酵処理を行った。
低CP飼料にリンゴジュース粕を10%添加した試験飼料を豚に給与すると,標準CP飼料(CP : 15.3%)に比較して,投入液の全窒素濃度は13%,消化液の濃度は9%低下した。同様に投入液のアンモニア性窒素濃度は34%,消化液の濃度は26%低減した。低CPリンゴジュース粕飼料の給与により,標準CP飼料給与に比べて,メタン発酵によるバイオガス発生量が1.3倍に増加し,また,メタン発酵ガス中の硫化水素の濃度が1/5と大きく低下した。以上のことから,メタン発酵処理において,低CPリンゴジュース粕飼料の給与により,標準CP飼料に比べて,発生メタンガス回収効率で約30%向上し,脱硫コストが約70%低減する可能性が示唆された。