抄録
1 豚産肉能力検定成績報告書のデータを用いて, 場内ベースで, 子豚の検定記録の分散の季節成分, 年次成分および両者の交互作用成分を推定し, 発育3形質および屠肉2形質の検定記録に対する季節および年次の影響の大きさを検討した。これらの影響は, 屠肉2形質より発育3形質に対して大きかった。
季節・年次内分散については, その父成分, 母成分および腹内分散を推定した。
2 季節および年次の影響が, 種雄豚の後代検定の正確度をどの程度低下させているかを, 理論式に上記の種々の推定値を入れて検討した。季節や年次の影響がない場合の正確度を100%とおくとき, おおむね20~40%の低下がみられる。屠肉2形質における低下率の方が発育3形質の場合よりやや小さい。
3 同期比較による補正を後代加検定記録に加えることで, 失われた後代検定の正確度がどの程度回復されるかを, 一定条件の想定の下で検討した。補正の有効性には一季節・年次区分における種雄豚の数が関係し, 種雄豚2頭, 検定子豚数16頭位の規模の検定の場合には, 発育3形質については補正がいくらか有効であるが, 屠肉2形質については効果がない。その倍位の規模になると, 両種形質とも補正の有効性は遙かに増し,失われた正確度の約1/2~2/3が補正によって回復される。この意味で後代わ検定の正確度を可及的に高く維持するためには, 場ごとの事業の規模が重要性をもつ。