抄録
38頭の系統間三元交雑去勢雄豚と雌豚を用い, 体重が30kgから120kgまでの化学的体構成成分の量的変化と蛋白質および脂肪蓄積能力を性別に比較検討した。単飼, 不断給餌条件下で飼育した去勢雄豚と雌豚を生体重30, 45, 60, 75, 90, 105および120kgで各性, 2ないし3頭ずつ屠殺した。胃腸内容物を除いた屠体は凍結, 粉砕後, 化学分析に供した。1日平均飼料摂取量は体重の片対数式で表され, 去勢雄豚は雌豚より多くの飼料を摂取した。発育に伴う全屠体中の水分, 脂肪および蛋白質含量は, いずれも体重を変数としたアロメトリー式 (Y=aXb) があてはまり, 相対成長係数は水分については去勢雄豚が0.803, 雌豚が0.903と劣成長 (0<b<1), 脂肪については去勢雄豚が1.624, 雌豚が1.383と優成長 (b>1) を示し, 蛋白質については去勢雄豚が0.919の劣成長, 雌豚は1.041の優成長であった。また, 水分, 脂肪および蛋白質について, 体重65kg付近から去勢雄豚と雌豚の性間差が生じ始め, 去勢雄豚は雌豚より水分と蛋白質が少なく, 脂肪が多くなった。日齢を基準として各成分の増加を性間で比較すると, 脂肪については去勢雄豚, 雌豚ともアロメトリー式があてはまり, 110日齢付近から去勢雄豚の増加量が雌豚より大きくなった。一方, 水分と蛋白質は日齢の片対数関数で表され, 去勢雄豚と雌豚で性間の違いは認められなかった。1日当りの蛋白質蓄積量は去勢雄豚, 雌豚とも体重が30kgから45kgの期間が最も多く, それぞれ157.8g, 133.3gと推定された。