2018 年 27 巻 1 号 p. 17-27
惑星科学研究でよく用いられる衝突クレーターに対する標準スケーリング則の一つとして,πスケーリングが挙げられる.このπスケーリングは,点源近似と呼ばれる仮定を基に定式化されている.一方,最新のレーザー測距計を使った高速衝突条件下における掘削流の定量観測によれば,この点源近似は実際のクレーター形成過程においては厳密に成り立っていないことが報告されている.本稿では,この最新結果について紹介するとともに,衝突クレーターのスケーリング則の一つである水谷スケーリングに基づいて,πスケーリングに対する新しい解釈についての議論を展開する.