近年,技術の粋を結集したALMA望遠鏡やすばる望遠鏡によって,惑星系の母体天体である原始惑星系円盤の精緻な画像が得られ,惑星形成の研究が急速に進歩している.様々な観測手段がある中,特に電波と赤外線による観測は相補的で円盤の物理構造を調べるのに有効であり,双方の専門家からなるチームを組織し,協力して科学成果を出す時代となっている.本稿では,筆者が所属する世界最大の電波望遠鏡ALMA国際プロジェクトと光・赤外線望遠鏡すばるを用いた系外惑星および星周円盤の戦略的探査プロジェクト(SEEDS)の成果を中心に,最新の観測結果と新たな問題点について言及する.最後に,次世代型望遠鏡の到来を見据えた今後の展望について,現行する代表的な開発事例を織り交ぜながら見ていく.
惑星科学研究でよく用いられる衝突クレーターに対する標準スケーリング則の一つとして,πスケーリングが挙げられる.このπスケーリングは,点源近似と呼ばれる仮定を基に定式化されている.一方,最新のレーザー測距計を使った高速衝突条件下における掘削流の定量観測によれば,この点源近似は実際のクレーター形成過程においては厳密に成り立っていないことが報告されている.本稿では,この最新結果について紹介するとともに,衝突クレーターのスケーリング則の一つである水谷スケーリングに基づいて,πスケーリングに対する新しい解釈についての議論を展開する.
現在の惑星放射は惑星の形成時における過去の集積の記録を反映しており,惑星形成プロセスを制約する上で重要である.惑星は高温の初期状態から大気からの放射によって冷却していく.したがって,大気の状態は惑星の冷却効率に影響を与える.これまでの巨大惑星の冷却では大気の組成は進化を通して不変であると仮定していた.しかし,巨大氷惑星では,形成初期において重元素に富む大気を持っていたことが,惑星形成論から示唆されている.これら重元素は低温環境下では凝縮すると考えられる水,アンモニア,メタンを含み,これらの成分が大気の温度構造に影響を与える.本研究は凝縮による惑星放射と惑星熱進化への影響を定量的に調べた.凝縮による潜熱解放によって大気の温度を維持し,高い惑星放射を維持することにより惑星の冷却効率が上がることを示した.このことは,天王星の放射強度が理論的な推定よりも小さいという問題に重要な示唆を与える,また,重元素に富んだ大気を持つ巨大氷惑星は中間赤外で明るくなることもわかり,太陽系外の巨大氷惑星の直接撮像にとっても重要な示唆を与えることができた.
Monahans( 1998)とZagは1998年に地球に落下した普通コンドライトである.これらの隕石には岩塩であるハライト(Halite : NaCl)が含まれており,そのハライト中には水を主成分とする流体包有物が存在していた.そのため,小惑星帯に存在する天体の水の起源を考える上で非常に興味深い試料として,様々な研究がなされてきた.これらの二つの隕石の岩石的な特徴と年代学的な研究,及び,ハライトの成因について紹介する.
金星に雷はあるか?この課題に決着をつけるべく,世界初にして唯一の惑星雷放電発光観測装置LACは金星周回軌道で観測を継続しています.2018年1月末現在,まだ雷の信号は捉えていませんが,先行研究との十分な比較を行うためには,もうしばらくデータの蓄積が必要です.
◇日本惑星科学会第124回運営委員会議事録
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