日本惑星科学会誌遊星人
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特集「火星圏のサイエンス」
残留磁化緩和時間に基づく火星磁気異常ソースの評価
佐藤 雅彦山本 裕二西岡 孝小玉 一人望月 伸竜潮田 雅司中田 亮一綱川 秀夫
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2018 年 27 巻 3 号 p. 173-179

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抄録

現在観測されている火星の地殻磁気異常を説明するためには,数十kmの火星地殻深部で40億年間安定に残留磁化が保存されている必要がある.本稿では,残留磁化の安定性という観点から,火星地殻磁気異常のソースと成り得る磁鉄鉱の粒径・形状の評価を行った.様々な火星熱史を仮定して計算を行った結果,ユーレイ比が低い場合では針状単磁区磁鉄鉱が磁気異常ソースと成り得る事が,ユーレイ比が高い場合では針状単磁区磁鉄鉱に加えて等方的単磁区磁鉄鉱と擬似単磁区磁鉄鉱もソースと成り得る事が明らかになった.一方で,いずれの場合でも粗粒な多磁区磁鉄鉱ではソースと成り得ない事が明らかになった.従って,観測されている磁気異常を説明するためには火星地殻中にはたとえ数十kmの深部であってもミクロンサイズ以下の細粒かつ針状の磁鉄鉱が普遍的に存在している必要がある事が示された.今後の研究では,火星の地殻深部に細粒かつ針状の磁鉄鉱を作る条件を調べていく事で,火星地殻生成条件に関して新たな制約を与えられる可能性がある.

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