消費者行動研究
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早期公開論文
早期公開論文の6件中1~6を表示しています
  • システマティックレビューを通じた構造仮説の構築
    榎澤 祐一
    原稿種別: 特集論文
    論文ID: 202410.001
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー 早期公開

    近年、宗教心の消費者倫理への影響に関する研究では宗教心、消費者倫理それぞれの概念が拡張している。宗教心では、信心の質的側面に関する宗教的態度に加え、人生の意味や目的を自己完結的に見いだす態度としてのスピリチュアリティが注目を集めている。消費者倫理は反社会的行動を思いとどまる心的基準だけでなく、リサイクル行動に代表される向社会的行動の基準をも内包するようになった。そして、両者の概念が拡張するにつれ、実証研究から導かれる成果の全容が掴みづらくなっている。

    そこで新たな構造仮説の提案を目的に、宗教的態度が消費者倫理に与える影響に関する実証論文23本をレビューした。その結果、①宗教的態度を操作化した概念として多くの研究で宗教的関与が用いられており、その中でも内発的宗教性が与える影響に特に再現性が認められること、②宗教的態度が消費者倫理に与える影響については、内発的宗教性とスピリチュアリティの間に等価性が認められることを明らかにした。これらの示唆に基づき構造仮説を提案する。

  • 実証研究を中心としたシステマティックレビューから
    國田 圭作
    原稿種別: 特集論文
    論文ID: 202410.002
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー 早期公開

    「持たない消費」など今日の消費者行動の変化に対し、ブランド経験の提供とそのマネジメントは企業にとって重要なテーマである。ブランド経験が学術的に定義されてすでに20年以上が経つが、その特性についての研究はまだ十分ではない。本研究は現時点のブランド経験研究の到達点を確認し、そのうえで今後の研究の方向性を提示することを目的として、先行研究(1991年から2015年までのブランド経験文献レビュー)を引き継ぐ形で2015年から2022年までの文献のうち107本(うち98本が実証研究)についてレビューを行った。その結果、ブランド経験がブランドロイヤルティなどの企業成果に与える影響の研究は一巡したが、ブランド経験概念自体の研究はまだ進んでいないことがわかった。そのうえで、今後のブランド経験研究の展望を、2つのリサーチアジェンダとして提示した。本研究はブランド経験研究にとっての資料的価値だけでなく、ブランドマネジメントの実務にも有用な知見となるだろう。

  • 処理の流暢性・エンゲージメントとの関連から
    河股 久司
    原稿種別: 特集論文
    論文ID: 202410.003
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー 早期公開

    本稿では、要因間の適合がもたらす意思決定やプロセスに対する適切感の知覚が、消費者に与える影響についてレビューを行った。適切感に関する研究について、測定尺度を用いて検討した16編の論文をマーケティング・ミックスの概念を用いて整理した。整理の後、本研究領域を概観することで、次の3つの特徴を確認した。1つ目は、適切感の対象が多岐にわたること、2つ目は、適切感の測定尺度が一貫していない点である。また、3つ目として、処理の流暢性などとの他概念との関連性が強い点である。これらの特徴を踏まえて議論を行った。

  • 生活体系アプローチの視点から
    磯田 友里子
    原稿種別: 特集論文
    論文ID: 202410.004
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー 早期公開

    近年の消費者行動を理解するにあたり、時間は重要な概念である。しかし、既存の消費者行動分野における時間研究は、各々の関心や依拠する学問領域に基づいて細分化が進んでおり、時間にまつわる消費者行動の全体像が見えづらくなっている。そこで本稿では、消費活動を連続的な生活の営みの一部ととらえ、生活体系アプローチに基づく分析枠組みに照らし、時間と消費者行動の関係を「生活行動レベル」「消費行動レベル」「購買・買物、使用行動レベル」という3つの分析レベルに分けて考察する。さらに、研究対象となりうる時間の側面を「配分・交換可能な資源」「消費活動が遂行される環境・条件(コンテクスト)」「製品属性」に整理し、今後の研究の展望を示す。

  • 既存研究の整理と今後の研究展望
    岡部 沙麗, 元木 康介
    原稿種別: 特集論文
    論文ID: 202410.005
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー 早期公開

    近年、社会的・学術的に性的マイノリティに関する研究の重要性は増している。性的マイノリティとは、性的指向や性自認におけるマイノリティを指し、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィアなどが含まれる。消費者行動研究においても、多様性・公平性・包括性の観点から、性的マイノリティは注目を集めている。本稿は、性的マイノリティに関する近年の消費者行動研究を体系的にレビューすることで、最新研究動向と今後の方向性を示す。既存研究は、性的マイノリティ消費者に関する研究、性的マイノリティが登場するマーケティング刺激に関する研究に大別できる。前者の研究群では、異性愛者と比較した性的マイノリティ特有の消費者行動が扱われている。後者の研究群では、広告を主な題材として、異性愛と比較した同性愛イメージの影響を検討している。今後の研究展望として、多様な性的マイノリティ・異性愛消費者と性的マイノリティ消費者の相互作用・広告以外のマーケティング活動における性的マイノリティ・中長期的な影響等が挙げられる。

  • 三富 悠紀
    原稿種別: 特集論文
    論文ID: 202410.006
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー 早期公開

    時間圧力とは、時間制約がある中で意思決定を行う際に消費者が知覚する焦りないしはストレスのことである。昨今、時間制約がある中で意思決定を行う機会が増えており、時間圧力が消費者の行動に与える影響について、既存研究の知見を整理する必要が求められる。そのため本稿では、時間圧力に関するさまざまな実証研究について包括的なレビューを実施した。レビューの結果、時間圧力を知覚することによって、消費者の情報処理と意思決定の仕方が変化すること、商品に対する知覚形成・購買意欲に対してポジティブな影響・ネガティブな影響を与えることの2点が明らかになった。またポジティブな影響とネガティブな影響が混在する要因として、商品に起因する知覚リスクと時間制約そのものに対する知覚リスクが考えられることを議論している。

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