Wistar系雄ラット(生後6週齢)を用い,運動トレーニングによる血清コレステロール・レベルの低下と肝コレステロール代謝との関係について検討した.また,両者と血清インシュリンおよびチロキシンとの関係についても検討を加えた。ラットに負荷したトレーニングは毎分20mのトレッドミル走で,週6日の頻度で10週間行った.運動群の一日の運動時間は20分間(E20群)と60分間(E60群)の2種類とした.結果は以下であった。)血清総コレステロールは運動時間の延長にともない減少し,E60群では約23%(pくO.01)底値であった。HDLコレステロールも同様にE60群で最も低かった。2)肝ミクロソームHMG-CoA還元酵素活性は運動時間の長い群ばと促進し,血清コレステロールとの問に有意な負の相関関係を認めた.3)血清インシュリンは運動群が低い値を,血清チロキシンは運動群が高い値を示した.肝HMG-CoA還元酵素活性と血清インシュリンの間に有意な負相関を認めた。また,血清総コレステロールとの関係では,血清インシュリンは有意な正相関を,血清チロキシンは有意な負相関がみられた.以上の結果から,運動にともなう血清コレステロール低下の要因として,肝を中心とする生体内のコレステロール代謝促進が関与する可能性が考えられた。また,各種ホルモンの変動についても,さらに検討する必要があると思われた。
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