日本セトロジー研究
Online ISSN : 2434-1347
Print ISSN : 1881-3445
19 巻
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  • 大石 雅之, 和田 志郎, 山田 格, 今原 幸光
    2009 年 19 巻 p. 1-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2019/12/04
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    近年、ツノシマクジラBalaenoptera omurai Wada, Oishi et Yamada, 2003が新たに記載された際に、いわゆるニタリクジラBalaenoptera edeni Anderson, 1878/9はカツオクジラB. edeni と狭義のニタリクジラBalaenoptera brydei Olsen, 1913 に分けられることが指摘された。筆者らによる台湾やタイなどの調査では、これら3 種の中型のナガスクジラ科鯨類が多数存在することがわかっているが、比較できる標本が増えたことで、頭頂部の形態学的特徴に加えて、翼蝶形骨周辺の脳頭蓋側面の形態でも3種が明瞭に識別できることがわかってきている。和歌山県立自然博物館と大分県杵築市立図書館には、かつていわゆるニタリクジラB. edeniとして報告されたナガスクジラ科鯨類標本が保管されているが、カツオクジラB. edeni のホロタイプを含む既報告の標本の頭頂部と翼蝶形骨の形態の比較により、これらの標本はカツオクジラB. edeniであると判断される。

  • 本間 義治, 古川原 芳明
    2009 年 19 巻 p. 9-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2019/12/04
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    前報(本間・古川原,2008)に引き続き,佐渡海峡の新潟~両津間における佐渡汽船ジェットフォイルならびにカーフェリーによる鯨類目撃記録を,2007年分につき整理してみた.目撃回数は69回と多く,この監視情報を取り纏めてから最高数となった.複数個体が確認されたのは,10回であった.群れサイズは,ハナゴンドウ数十頭が8月下旬~9月初旬にかけて3回目撃され,その他は4頭が1回,3頭が2回などであった.カーフェリーによる目撃は21回,ジェットフォイルは48回であったが,これは多分,就航便数を反映しているのであろう.2006年同様に,鯨類は2月から見られたが,5月(20回)にピークをもつ4~6月に山が形成された.時間帯は6時台から17時台までの間で,満遍なく目撃されたが,午前は10時(14回),午後は2時(14時,8回)に山が見られた.今回も就航船のほとんどが多分別個体を記録していたと見做される.遊泳方向が確かめられたのは,北11回,南18回で,他は1回ずつであり,南下か北上かと遊泳方向の時期は決定できなかった.目撃場所は,ポイント3~4の間(航路中央帯)で圧倒的に多かったが,2007年中には,鯨類を含む大型障害物との接触ないし衝突は無かった.

  • 堀本 高矩, 金子 拓未, 柴田 泰宙, 松石 隆
    2009 年 19 巻 p. 13-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2019/12/04
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    カマイルカLagenorhyncus obliquidensは春に津軽海峡内に来遊し、4月~6月の間で最も多く観察される。本研究では、2003年5月から2008年8月までに得られた函館~青森間に就航するフェリーからの鯨類目視調査記録を分析し、津軽海峡内でのカマイルカの回遊を明らかにした。カマイルカの分布は時期によって傾向が異なっていた。初期(3、4月及び5月上旬)には、カマイルカは津軽海峡の北部水域で多く発見された。そして、盛期(5月中旬~6月中旬)には、津軽海峡全体に分布が拡大していった。終期(6月下旬~7月)には、津軽海峡南部でカマイルカが多く発見され、それ以降、カマイルカの発見はなくなった。このような回遊パターンは各調査年に共通して見られた。

  • 南部 久男, 徳武 浩司, 石川 創, 大田 希生, 藤田 健一郎, 山田 格
    2009 年 19 巻 p. 17-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2019/12/04
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    2005年春に東京湾に出現したコククジラの出現状況を調査した。このコククジラは4月中旬から5月初旬にかけて東京湾内で目撃され、5月11日に千葉県南房総市旧富山町沖1kmの小型定置網で混獲されて死亡した。筆者等は5月5日から10日の間に東京湾の3海域(千葉県袖ヶ浦市沖、同県習志野市沖、神奈川県横須賀市〜横浜市沖)でこのコククジラを観察する機会を得た。いずれの出現海域も沿岸の浅海で、袖ヶ浦市沖(沖合50〜100m、最短20m程)と習志野市沖(沖合10m〜100m)では索餌をしていたと考えられ、横須賀市〜横浜市沖(沖合100〜1400m、水深11〜18m)では沿岸にそって北へ遊泳していた。本個体は東京湾へ迷入したものと思われる。観察結果からは泥底での摂餌嗜好性、北上しようとする意図があった可能性などを窺うことができた。

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