小説家D. H. Lawrenceに対する評価は今更ここで繰り返すまでもなく定着している。が、詩人Lawrenceについてはどうだろうか。この点になると、とかく疑問符が付けられ勝ちであった。しかしながら、1970年から73年をピークにして、今はLawrence詩も受容・評価の時期に入っていると言えるだろう。本稿でもこのような批評の動向を踏まえながら、彼が初期の詩から「海」というアーキタイパルな象徴をどのような意味で使っているか、そしてその意味合いがどのように変化して行っているかを、晩年の大作"The Ship of Death"に集約させる方向で辿ってみたい。その際、「北」と「南」の方位が、彼の描く「海」の意味合いと深く繋がっていることも併せて指摘したいと思う。