重度の開口拒否を有する高齢者に実施した泡ケアの効果を報告する.
症例は80歳代男性,溺水後の意識障害,両側性肺炎で入院し,言語聴覚士が介入した.口腔機能は改定口腔アセスメントガイド(ROAG)で22/24,口腔水分計ムーカス®(ムーカス)で9.2と重度であった.著しい開口拒否の出現で従来の口腔ケアの施行は困難であった.我々は洗口液をスポンジブラシで攪拌して生じた泡沫を口腔ケアに用いる泡ケアに着目した.泡ケアの泡沫は適度な粘性を有し,開口拒否患者に対してもシリンジの活用で,固有口腔内への塗布が可能であった.泡ケアの継続でROAG が8/24,ムーカスが30.5と正常に改善した.
従来の口腔ケアと比較して泡ケアは洗口液の使用量が約1/2,実施時間が約1/3に減少した.泡沫に含まれる多量の空気が口腔内付着物に浸透して洗浄効果を高めたと推察した.泡ケアは口腔ケアに難渋する症例へ適応の拡大が期待できる.
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