嚥下医学
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原著
  • 山本 陵太, 梅﨑 俊郎
    2025 年14 巻2 号 p. 196-201
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/06
    ジャーナル フリー
    封入体筋炎は50代以降の中高年に好発する慢性進行性の筋疾患であり,根治的治療法は確立されていない.封入体筋炎において40%の頻度で発生する嚥下障害は,輪状咽頭筋の変性と線維化による食道入口部の開大不全が主な病態であり,嚥下造影検査において母指圧痕像を呈することが特徴である.病勢の強い症例では,喉頭挙上の悪化や咽頭収縮力の低下などが加わり,治療が長期間に及び難渋することもある.今回我々は,封入体筋炎による嚥下障害に対して輪状咽頭筋切断術ならびに喉頭挙上術を行い,術後のバルーン引き抜き訓練を併用することで,食事摂取レベルを比較的短期間で改善しえた1例を経験したので報告する.
  • 孔 憲和, 馬場 洋徳, 岩井 玄樹, 太田 淳, 前川 和也, 髙嶋 沙緒里, 大橋 瑠子, 井上 誠, 香取 幸夫, 堀井 新
    2025 年14 巻2 号 p. 202-210
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/06
    ジャーナル フリー
    症例は82歳女性.当科初診4年前に近医脳神経内科にて封入体筋炎と診断された.2年半前から嚥下困難感を自覚しバルーン拡張法が開始された.しかし年々バルーン拡張法の効果が減弱し,負担や苦痛も増してきたため,嚥下機能改善手術の検討目的に当科紹介となった.封入体筋炎による食道入口部開大障害を中心とした嚥下障害と考えられたことや頸部外切開を希望しなかったこと,後期高齢者に対しての侵襲性を考慮し,内視鏡下輪状咽頭筋切除術を施行した.術後合併症なく経過し,術後7 日目から経口摂取を再開した.手術後には,バルーン拡張法は不要となり,food intake level scale(FILS)は術前Level 8から術後Level 9へと改善した.封入体筋炎による嚥下機能障害では,後期高齢者症例であっても,内視鏡下輪状咽頭筋切除術は低侵襲かつ有効な治療法と考えられた.
  • 杉山 明宏
    2025 年14 巻2 号 p. 211-219
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/06
    ジャーナル フリー
    重度の開口拒否を有する高齢者に実施した泡ケアの効果を報告する.
    症例は80歳代男性,溺水後の意識障害,両側性肺炎で入院し,言語聴覚士が介入した.口腔機能は改定口腔アセスメントガイド(ROAG)で22/24,口腔水分計ムーカス®(ムーカス)で9.2と重度であった.著しい開口拒否の出現で従来の口腔ケアの施行は困難であった.我々は洗口液をスポンジブラシで攪拌して生じた泡沫を口腔ケアに用いる泡ケアに着目した.泡ケアの泡沫は適度な粘性を有し,開口拒否患者に対してもシリンジの活用で,固有口腔内への塗布が可能であった.泡ケアの継続でROAG が8/24,ムーカスが30.5と正常に改善した.
    従来の口腔ケアと比較して泡ケアは洗口液の使用量が約1/2,実施時間が約1/3に減少した.泡沫に含まれる多量の空気が口腔内付着物に浸透して洗浄効果を高めたと推察した.泡ケアは口腔ケアに難渋する症例へ適応の拡大が期待できる.
  • 木村 俊哉, 土師 知行
    2025 年14 巻2 号 p. 220-227
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/06
    ジャーナル フリー
    当院の嚥下サポートチームでは嚥下困難のある入院患者に嚥下内視鏡検査(VE)を行い,経口摂取の可否や言語聴覚士(ST)による摂食嚥下訓練の決定を行っている.今回2022年7月から1年間に当チームで施行したVE(気管切開症例を除く)488症例を対象に,VE 時所見(兵頭スコア,ゼリーの残留の程度〈喉頭蓋谷,梨状陥凹〉,とろみ水の喉頭侵入・誤嚥の程度)および全身状態(意識レベル,アルブミン値)が食形態や摂食嚥下訓練の決定に寄与したか否かを調べる研究を行った.経口摂取不可群(60例)と直接訓練群(132例)では血清アルブミン値を除く全項目で,直接訓練群と食事摂取可能群(296例)では全項目で統計学的有意差が認められた.直接訓練は兵頭スコア7点の症例が最も多いが,6点以下でもアルブミン値や意識レベルが悪い症例,8点以上でもゼリー・とろみ水の嚥下状態や意識レベルが良い症例は直接訓練の適応となる傾向があった.
  • 關口 相和子, 藤谷 順子, 古川 美穂子, 竹田 真奈美, 月永 暁裕, 田中 早貴, 柏村 浩一, 菱沼 亜美
    2025 年14 巻2 号 p. 228-236
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/06
    ジャーナル フリー
    高齢者の摂食嚥下リハビリテーションにおいて,喉頭挙上の駆動筋力としての舌骨上筋群および下筋群の筋力(以下,頸部筋力)は重要であるが,その客観的評価手法は確立されていない.我々は,頸部専用アタッチメントとハンドヘルドダイナモメーターを用いた新たな頸部筋力計測法を開発し,その信頼性を報告している.本研究では,臨床場面での有用性を後方視的に検討した.患者カルテから背景情報,頸部筋力値,栄養摂取レベル(FOIS),最大呼気流量(CPF),舌圧などを収集し分析した結果,頸部筋力計測は高い計測可能率を示した.また,頸部筋力が改善した群ではFOIS改善割合が高い傾向を認めたほか,頸部筋力とCPFおよび舌圧には正の相関が認められた.これらの結果は,頸部筋力が口腔器官の筋力や呼吸機能,栄養摂取レベルなど摂食嚥下機能と関連することを示している.本計測法は,摂食嚥下リハビリテーションにおける新たな客観的評価指標としての臨床応用が期待される.
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