こころの科学とエピステモロジー
Online ISSN : 2436-2131
4 巻, 1 号
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目次
原著論文
  • 田中 彰吾, 森 直久
    原稿種別: 原著論文
    2022 年4 巻1 号 p. 2-17
    発行日: 2022/06/05
    公開日: 2022/06/05
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、オンライン会議システムを利用する機会が増え、テレワークや遠隔授業を通じて社会に定着しつつある。オンラインでの会話と対面での会話に違いがあることはすでに広く認知されているが、具体的にどのような質的差異があるのかは必ずしも明らかにされていない。本稿は、現象学者メルロ゠ポンティの「間身体性」の観点を応用して、この差異を解明することに取り組む。間身体性は、自己の身体と他者の身体とのあいだに潜在する相互的・循環的な関係性であり、非言語的コミュニケーションの同期と同調を通じて表出する。対面での会話場面とオンラインでの会話場面の観察データを間身体性の観点にもとづいて比較・分析すると、両者には、視線・姿勢・距離など、非言語の身体的相互作用において大きな違いが見られる。対面での会話は、自他間の身体的相互作用から創発する「あいだ」(または「間(ま)」、「場」)によって会話の過程と内容が左右され、情動や気分が参加者間で共有されやすい。これに対して、オンラインでの会話は身体的相互作用が貧弱になるものの、参加者間で創発する「あいだ」による拘束を受けにくく、明示的な言語的メッセージのやり取りや、個人的な見解に踏み込んだ意見の交換を促進しやすい。
  • 黄 信者
    原稿種別: 原著論文
    2022 年4 巻1 号 p. 18-32
    発行日: 2022/06/05
    公開日: 2022/06/05
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本論は日本大正期の雑誌『変態心理』の分析を通して、1990年代から非西洋文化の中でみられるようになった新しい心理学の形式Indigenous Psychology(IP)を検討することを目的とする。方法としては、心理学史の視座を用いて、『変態心理』の復刻版(全34巻)を主要研究資料とし、現在のIPで言う「土着の概念・知識」と関わる文献を抽出して分析を行った。その結果、『変態心理』は「土着の概念・知識」と、それを内包する民間精神療法・心霊現象を研究対象にしていることがわかった。また時期によって論じ方が変わる傾向がみられた。抽出した論文をみると、対象だけでなく方法も、現在のIP研究と合致していることが少なくない。つまり、現在のIPの視点を取り入れながら『変態心理』を分析すると、当雑誌の心理学史における位置づけを再評価できるかもしれない。しかし、筆者の分析では、『変態心理』における「土着の概念・知識」の解釈と議論は不十分であり、特に具体的な身体経験への関心が不足している。それは同時に現在のIP研究への啓示ともいえる。
翻訳
研究随想
  • トポロジカルに記述された世界の変容
    小笠原 義仁
    原稿種別: 研究随想
    2022 年4 巻1 号 p. 46-63
    発行日: 2022/06/05
    公開日: 2022/06/05
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    近代科学は、その言語として数学が用いられていることにより特徴付けられる。本報は、数学の中でも特にトポロジーについて、その言語としての可能性を示すものである。具体的には、その基本的な概念について説明された後に、それを言語とすることにより切り拓かれる新たな世界像の可能性を示している。例えば、全てのものが「もの」となり、自己が空虚となり、外的世界も空虚となり、その両者の間には障壁だけが存在するという世界や、逆に一切の「もの」は無くなり、自己と外的世界が最大限に充実して、その両者の境界が無くなるという様な世界の描かれる可能性が示されている。あるいは、外的世界が自分自身にまとわりついて区別することができなくなるという様な世界や、逆に外的世界と自分が、何の曖昧さもなく、これ以上になく明確に区分されているという様な世界の描かれる可能性が示されている。さらには、直感的に明らかと思われる「連続」や「不連続」といった概念が解体されて、その裂け目から覗く新たな認識の可能性が示される。それは、日常言語とは差異のある言語としての数学、特にトポロジーを利用して世界を記述しようとすることにより、逆にトポロジーによって語られる新たな世界の創発である。
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