情報通信政策レビュー
Online ISSN : 2435-6921
7 巻
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学術論文
  • ― ソーシャルゲームの実証分析と政策的含意 ―
    山口 真一
    2013 年 7 巻 p. E1-E23
    発行日: 2013/10/29
    公開日: 2020/09/05
    ジャーナル フリー
    本研究では、モバイルコンテンツの中でも特に、市場規模が急速に拡大しているソーシャルゲームについて、指摘されることの多い以下の4つの仮説を問題意識とし、実証分析によって定量的・定性的な検証を行う。
    第一に、射幸心を過度に煽り、リスク選好者を集めてそこから収益をあげている可能性。第二に、過度の依存性が課金額を高めており、そこから収益をあげている可能性。第三に、他の娯楽に比べ依存性が高く、ユーザの生活に支障をきたしている可能性。第四に、低年齢層の依存度が高く、課金額も高まっている可能性。
    これらを確かめるため、まず、課金額、依存度、リスク選好度、年齢を明示的に組み込んだ同時決定モデルを構築して推定を行った後、依存度とリスク選好度についてはさらに、他の娯楽との違いを記述統計によって比較調査した。
    実証分析の結果、ソーシャルゲームへの依存度と月次課金額の間に双方向因果関係は確認されなかった。また、年齢についても、年齢は依存度には影響を与えておらず、課金額においては可処分小遣いの要素を排除してもなお、年齢の高いユーザの方が高かった。また、リスク選好度は月次課金額と依存度に有意に正の影響を与えていたものの、比較調査においては、ソーシャルゲーム・ユーザの依存度とリスク選好度が他の娯楽と比べて特別高いということはなく、リスク選好度はむしろ低いという結果になった。
    以上の事から、ソーシャルゲームについて過度の政策的規制は必要がなく、むしろ社会的厚生を下げる懸念がある。また、社会通念的に問題ない産業であるならば、日本発の一大デジタルコンテンツ・情報通信産業としてビジネスモデルを考察・確立し、より一層の発展を促すと同時に、他産業にも生かしていくのが望ましいと考えられる。その一方で、少なからず存在するトラブルを減少させるためにも、モバイルコンテンツに対する教育を、幅広い年齢層に充実させる必要があると思われる。
  • 河井 大介
    2013 年 7 巻 p. E24-E44
    発行日: 2013/10/29
    公開日: 2020/09/05
    ジャーナル フリー
    スマートフォンが急速に普及する中、その利用実態に関して、2012年に行われた東京大学情報学環橋元研究室と総務省情報通信政策研究所の共同調査(全国訪問留置法による日記式調査)に基づいて明らかにした。分析の結果、スマートフォンは従来型携帯電話に比べインターネットを中心とした利用率が高い一方で、その個々人の利用時間は必ずしも延びておらず、モバイルによるインターネット利用のすそ野が広まったといえる。また、テレビ視聴とモバイル利用とのながら行動を分析した結果、スマートフォンユーザーにおいてメールやソーシャルメディアといったコミュニケーション系およびブログ・ウェブなどで行為者率が高く、ブログ・ウェブの利用ではテレビの情報をより詳しくネットで検索をするといった行為が想定できる。そして、スマートフォンでのソーシャルメディアの利用は、利用者のすそ野を広げてはいるが、友達の投稿内容を頻繁にチェックしなくてはならないといったような短い時間での頻繁な利用というより、むしろ自宅でまとまった時間にテレビを見ながらといった利用である可能性が示唆された。また、ネット動画についても、スマートフォンによって利用のすそ野は広がり、同時により様々な場所で利用されるようになり、まとまった時間をとって視聴しているという傾向も示された。
調査報告
  • -BSkyB 買収事件:代替案(UIL)の提示による議論の応酬-
    数永 信徳
    2013 年 7 巻 p. E45-E64
    発行日: 2013/10/29
    公開日: 2020/09/05
    ジャーナル フリー
    英国特有のクロスメディア所有規制である「メディア企業の合併規制」は、「メディア企業の合併に関する公益性審査基準」に基づいて審査が行われる。しかしながら、当該審査基準において、その規制の対象となる「メディア企業」の範囲は必ずしも明確にはなっていない。そのため、当該審査基準の運用次第では、規制の射程範囲が大きく変わってくることになり、規制強化にも規制緩和にもなり得る可能性を秘めている。
    これまで、メディア企業の合併に当該審査基準が適用された事件は、過去に三件ある。その中でも、2010 年11 月のBSkyB 買収事件では、買収を計画する企業側から「代替案(UIL)」が示され、英国政府との間で緊迫した協議が行われるなど、これまでに例のない議論の応酬があった。そこで、本稿では、BSkyB 買収事件におけるメディア企業の合併審査に当たって、英国政府がどのように判断し、審査を行っていったのか、その経過を把握していくこととする。
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