会計教育研究
Online ISSN : 2758-2132
Print ISSN : 2188-5575
10 巻, 1 号
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目次
統一論題報告「会計教育の遺伝子」
  • 田代 景子
    2022 年 10 巻 1 号 p. 10_2-10_9
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/12/12
    ジャーナル フリー

    原価計算教育の遺伝子について検討するにあたり,遺伝子について確認し,原価計算教育の遺伝子の探索を行った。原価計算教育の基礎として,原価計算の一般概念および派生概念について言及し,そのうえで,Horngren 他 Cost Accounting:a Managerial emphasis (1962~2021)を取り上げ,遺伝子を抽出した。すなわち,原価計算教育の遺伝子①CVP関連(分析),遺伝子②個別原価計算,遺伝子③配賦計算,である。そのうえで,原価計算論教育の遺伝子について検討した。

  • 清村 英之
    2022 年 10 巻 1 号 p. 10_10-10_18
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/12/12
    ジャーナル フリー

    本稿では,まず,商業高等学校等における専門教育としての簿記教育を取り上げ,新旧の学習指導要領上の「簿記」の目標を比較・検討した。検討の結果,①昭和25年試案の目標が踏襲されていること,②今後は「簿記」の学習を通じ,「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の育成・涵養が求められることを明らかにした。
    次に,中学校における普通教育としての会計教育を取り上げ,教科書における記述や年間指導計画を検討した。検討の結果,「企業会計」について説明できる時間は,10分~15分しかないことを明らかにした。また,「企業会計」を学習指導要領本体に盛り込み,1時間はその説明に充てる時間を確保するため,①誰もが理解できるわかりやすい表現で,会計基礎教育の必要性を明示すること,②「会計リテラシー・マップ」で,中高生の目標ではなく,中学生の目標,高校生の目標を提示すること,③会計士協会のリーダーシップの下,行政機関,業界団体,学界などを巻き込み,文部科学省への働きかけを積極的に行うことを提言した。

スタディ・グループ中間報告
  • 松本 敏史, 石田 晴美, 小林 麻理, 柴 健次, 島本 克彦, 竹中 徹, 飛田 努, 成川 正晃, 宮地 晃輔
    2022 年 10 巻 1 号 p. 10_19-10_25
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/12/12
    ジャーナル フリー

    現在ほとんどの地方自治体が「財務書類」をウエッブ上で公開している。この会計システムを活用するためには財務書類の読解力が必要だが,そこには2つのスタンスがある。ひとつは企業会計の分析手法を地方自治体の分析にそのまま適用しようというものである。しかし営利企業と地方自治体では行動原理が異なる。であればそれに適応する手法を開発すべきとする主張が出てくる。ではいずれに理があるか。
    近年,企業経営上最も重視されてきた指標にROEがある。これを「財務レバレッジ」「総資本回転率」「売上高利益率」に分解すればそれぞれの視点から企業経営の良否を判定する指標になる。しかしこの指標を地方自治体の分析に適用しようとすると,財源は売上高に代わる業績指標なのか,地方自治体の純資産は何を意味するのか等々の論点が次々に生じてくる。この中間報告では企業会計の手法に基づいて地方自治体の財務書類を分析する際に生じる論点を今後検討すべきテーマとして提示している。

  • 竹中 徹, 村上 敏也
    2022 年 10 巻 1 号 p. 10_26-10_32
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/12/12
    ジャーナル フリー

    COVID-19の感染拡大を契機として急速に普及した遠隔授業は,今後も高等教育機関における教育・研究活動を大きく変える可能性をはらんでいるものと考えられる。本スタディ・グループは,現在行われている会計分野における多様な遠隔授業を研究対象とするが,これらの実施形態に着目した実践の集積,整理といった方法はとらず,遠隔授業においてどのような教育内容が実践され,何が可能となったのかに着目した事例の収集,分析を計画している。これは,SAMRモデルが示唆するように,ICTおよびその利活用の進展が教育の質的側面の変化をもたらす可能性があるためである。なお,スタディ・グループでは,教育の質的側面の変化を検知する上で,遠隔授業の実践においてなぜそのテクノロジーが採用されたのかWhyの観点から考察を進めるにあたり,遠隔授業に関する論点を整理するための枠組みとしてインストラクショナルデザイン(ID: instructional design)に着目することとした。

教育理論研究
  • 小澤 義昭
    2022 年 10 巻 1 号 p. 10_33-10_42
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/12/12
    ジャーナル フリー

    米国においては,業務のデジタル化の進展に伴い会計事務所の業務内容に大きな変化が生じ,会計学を専攻した学生の会計事務所の新規採用数が大幅に減少している。それに伴い,会計学を専攻する学生数自体が各大学において減少傾向にあり,公認会計士試験の受験者数も大幅に減少している。このようなビジネス環境の変化を受けて,2024年1月から新しい公認会計士試験が導入されようとしている。また,この公認会計士試験改革を受けて,密接に関係する大学会計教育についても大幅な改革が促されている。本稿においては,米国における公認会計士試験改革の背景および内容を解説すると同時に,米国において取り組まれている大学会計教育に関するAICPA-NASBAの「モデルカリキュラム」の内容を吟味する。さらに,これらが今後のわが国における大学会計教育に与える影響について,筆者の考えるあるべき姿に基づいて考察を行っている。

  • ―大阪商業講習所の設立まで―
    工藤 栄一郎, 柴 健次
    2022 年 10 巻 1 号 p. 10_43-10_53
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/12/12
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,明治初期における商業教育が「制度化」していく過程を記述することで,その特徴を明らかにすることである。そのために,商業教育の制度化に関与した人物とその思想,それに教育課程および教育方法に着目し,それらの相関関係を記述していく方法を採用した。最初の近代的な商業学校である東京の商法講習所では,アメリカの商業学校を模倣した教育が実践された。しかしその後まもなく日本の各都市,具体的には,神戸,岡山そして大阪で展開されていく商業学校はいち早く西洋モデルの完全模倣から脱却したことが明らかとなった。また大阪商業講習所は,近世から続く商都大阪の固有の事情を反映しているという点でも特徴がある。明治初期における多くの社会制度の導入に照らすと,いち早く日本的な変容を加えた近代化の特異な事例であるともいえるかもしれない。

教育実践研究
  • 事例にもとづく論点探求
    潮 清孝, 加納 慶太
    2022 年 10 巻 1 号 p. 10_54-10_64
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/12/12
    ジャーナル フリー

    本稿は,高校におけるクラウド会計を用いた実践的授業についての事例研究である。事例校では,令和四年に行われる学習指導要領改訂を見据え,既存のビジネス・シミュレーション・ゲームを用いた授業において,クラウド会計を試験的に導入した。本稿では,担当教員7名に対するインタビューをもとに,クラウド会計を教育現場で利用することの意義や注意点などを探索的に議論している。その結果,授業環境に関連する初歩的な注意点などに加え,財務諸表作成能力から利用能力育成への授業目的の変化,クラウド会計の利点(遠隔操作性や共同作業環境など)を活かすための仕組みづくりの必要性などを明らかにした。

  • 梶原 太一
    2022 年 10 巻 1 号 p. 10_65-10_72
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2022/12/12
    ジャーナル フリー

    本稿は,教師中心から学習者中心の教育パラダイムへの転換を前提とした上で,学習者中心の貸借対照表の学びのモデルを導出するために,階層分析図を用いて貸借対照表の様々な解釈方法を列挙し,各解釈に応じたそれぞれの学習目標を達成するための積み上げ型の学習の過程がどのようなものになるのかを提示する。
    以上の検討が有する含意は次のとおりである。学習者による様々な解釈や学習目標の設定が可能である貸借対照表という学習素材は,学習者中心の教育実践を展開していくための絶好の教材であり,学習者および教師の双方が自己調整型学習の方法を習得する重要な機会として活用することができる。貸借対照表は,作成目的や分析方法の多様性という点から,他の学習者との意見の共有や議論を引き出しやすい話題であり,教師中心の指導から学習者中心の指導への円滑なパラダイム・シフトを実現可能にする学習素材である。

編集後記
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