『年報村落社会研究』(以下、村研年報)は、本学会の最も重要な成果物として年に一回発刊されてきた。村研年報のメインとなる「共通テーマ」は、学会の研究蓄積をふまえつつ、新たな研究の方向性を打ち出すために毎年設定され、本大会のテーマセッションでの発表を経て原稿化される。
この共通テーマの内容については、年報の「研究動向」でふれられるが、各年度の業績紹介が目的であるため、十分に取り上げる紙幅は用意されていない。学会の力を結集してつくった共通テーマならば、本来、多くの学会員に開かれる形で、さまざまな観点からその意義や課題が議論されるべきであろう。従来の研究蓄積や共通テーマとの対話はもとより、各自の調査経験との照合、隣接分野との接点や連動性、あるいは国際比較の可能性や理論的な意義など、多くの検討すべき事柄があるはずである。
本企画では、村研の特徴でもある二つの媒体(村研年報と村研ジャーナル)を活かし、村研年報の共通テーマを村研ジャーナルにおいて、合評対象として取り上げることとした。この企画を通して、村研大会のテーマセッションで頭に浮かんだ意見やアイディア、年報を読んでえた読後感など、いままで共有化できなかった会員の声に耳を傾けることで、議論の輪がさらに広がることを期待したい。
本書の構成
第1章日本農村社会の行方を問う(藤井和佐)
第2章「消費される農村」再論―集合体、関係性の視点から(立川雅司)
第3章六次産業化にみる農村性の構築―長野県における若手就農女性の事例から(小林みずき)
第4章いくつもの「移動に住まうこと」から問う場所―北海道屈斜路湖周辺の観光・レクリエーションを事例として(北島義和)
第5章プラネタリー・アーバニゼーションと農村社会の行方(玉野和志)
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