日本における介護分野では深刻な人材不足が問題となり,生産性向上が重要な課題となっている.特に,入浴介助は他の介助に比べ時間がかかり,介助者の負担が大きいとされている.入浴介助を効率化する手段として,全ての利用者に対して複数の介助者の分業による介助(以下,分業介助)が用いられてきた.分業は,特化による技能の集中と習熟を通じて生産性を高めるとされている.しかし,利用者1人の入浴介助時間は,分業介助でもほぼ変わらないという調査があり,分業介助と生産性向上のつながりは不明である.そこで本研究では,先行研究を参考に,入浴介助における分業介助をロールプレイ形式で実施し,分業介助が持つ時間短縮の条件を明らかにし,分業介助で入浴介助を行う際に求められるマネジメントについて考察した.その結果,合計所要時間と経過時間の差が正の値となるとき,時間短縮効果が確認できることから,同じ時間帯に2人の介助者が別々の利用者に対して介助を行う『介助の同時進行』が条件として示された.次に,分業介助で入浴介助を行う際に求められるマネジメントとして,入浴介助の時間短縮と利用者の安全及び尊厳保持という目標を達成することが必要であり,そのためには,利用者の個別ニーズと介助の同時進行をもとにした介助計画と,待機時間の有効活用の必要性が示された.本研究は,入浴介助における業務効率の向上や介助者の負担軽減に寄与する.
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