消化管癌はわが国で最も多いがん種の1つである.その分子生物学的メカニズムが明らかになり,診断・治療開発への応用が進んできた.2019年にがん遺伝子パネル検査が保険承認され,わが国でもがんゲノム医療が本格化してきた.複数の検査パネルが開発されてきたが,いまだ治療到達率は低い.検査が普及するとともに,消化管癌の予後の延長に寄与することが期待されるが,治療機会を逸さないよう主治医レベルでその特徴に習熟する必要がある.さらに,リアルワールドのがんゲノムのビッグデータが蓄積されてきている.データ利活用のシステム整備が進み,わが国独自の多くのエビデンスが発信されることが期待される.
表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(superficial non-ampullary duodenal epithelial tumor;SNADET)の増加にともない,内視鏡診断と内視鏡治療のニーズが高まっている.白色光や画像強調内視鏡を併用することで,生検診断と同等の成績が報告され,時に治療の妨げとなる生検の頻度を減らすことが期待される.また,さまざまな内視鏡治療法が開発・実践され,現時点ではSNADETの組織型や大きさを基準に内視鏡治療法の選択が行われるようになってきているが,診断および治療においては十分に成熟しておらず,依然として課題が多い.本稿では,SNADETの内視鏡診断および内視鏡治療の現況と課題について概説する.
高齢者の慢性便秘症に対しプロバイオティクス製剤を投与し,便秘症状重症度(Constipation Scoring System;CSS)の評価項目から『病悩期間(年)』を除いたmodified CSS(mCSS)で評価したところ,『排便回数』,『排便困難』,『残便感』,『腹痛』,『排便に要する時間』,『排便の補助の有無』,『排便しようとしても出なかった回数』,『mCSS合計スコア』で低下(改善)を認め,Bristol Stool Scale(BSS)も理想の便性状である4点に近づいた.⊿mCSS≧4群(『mCSS合計スコア』が4点以上著明に低下(改善))では,プロバイオティクス製剤投与前の『排便困難』,『残便感』,『心窩部灼熱感』各スコアが⊿mCSS<4群と比べて高く,治療効果の予測因子と考えられた.
慢性便秘症に対し刺激性下剤が慢性的に使用されているケースは多く,長期連用にともなう問題点を指摘されているものの,その対策については一定の見解はない.今回,刺激性下剤依存・抵抗性便秘症となった30名を対象に,当院が独自で考案した1週間入院プログラムを行った.大腸の形態変化を93%,腹部症状を80%以上に認め,ジッツマークⓇで評価した通過時間遅延型と,排便造影検査などで評価した排便困難型の合併例が80%を占めた.これらの内服薬だけでは対応困難と考えられる機能性便排出障害に対し,バイオフィードバック療法などを実施した.80%以上の患者が刺激性下剤を脱却でき,有用な治療法と考えられたため,その詳細につき報告する.
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