医療看護研究
Online ISSN : 2758-5123
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11 巻, 1 号
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論説
  • ─ライマン・フランク・ボーム『オズの魔法使い』
    黛 道子
    原稿種別: 論  説
    2014 年11 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/03/17
    ジャーナル フリー

     ライマン・フランク・ボームの『オズの魔法使い』は出版当初から人気を博し、今日に至るまで多くの子供たちに読み継がれている。この作品が書かれた当時は大資本が産業を牛耳り、時には政治を動かす力までも持ち、汚職や賄賂がはびこる「金ぴか時代」と呼ばれる時代だった。また、フロンティアの消滅とともに開拓期の夢はすでになく、人々は閉塞状態に置かれていた。ボームはオズの世界に富や力とは別の価値を描き出し、アメリカの童話として提示した。

原著
  • 川上 雅美, 工藤 綾子, 江原 義郎, 稲葉 裕, 岩渕 和久
    原稿種別: 原  著
    2014 年11 巻1 号 p. 8-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/03/17
    ジャーナル フリー

     麻疹ワクチンの接種率向上に向けた取り組みについて、2008年度第1期麻疹ワクチン接種率が全国第1位の三重県と第46位の滋賀県の保健所および市町保健センターに勤務する保健師を対象に、質問票による調査を実施した。第1期麻疹ワクチン接種を勧める啓発活動の実施状況において、「母子健康手帳交付時」の実施率が三重県では48.4%、滋賀県では13.1%であり、有意差がみられた。また、「出生届の提出時」の実施率は三重県24.7%、滋賀県10.3%、「1歳6ヶ月児健診時」は97.4%、90.2%、「3歳児健診時」は77.1%、49.5%、「新生児訪問時」では、79.6%、64.5%、「転入者に接種の説明」は、95.5%、86.7%、であり、これらの時期において三重県の実施率が有意に高かった。三重県と滋賀県における乳幼児健診の実施方法は、三重県では4ヶ月児健診と10ヶ月児健診を医療機関へ委託しており、小児科医が麻疹ワクチンを含む予防接種に関する説明を保護者に行っていた。また、電子化された予防接種台帳を用いた1歳6ヶ月児と3歳6ヶ月児の時点での予防接種全般の接種率把握ができていた。一方、滋賀県では主に市町保健センターが乳幼児健診を実施しており、保健師が予防接種の説明を行っていた。以上のことから、保健師活動とともに医療機関が相互補完的に保護者に啓発活動を行うことが麻疹予防摂取率向上に重要であると考えられた。

  • ─生物学的製剤療法との関連性の検討─
    樋野 恵子, 青木 きよ子, 高谷 真由美
    原稿種別: 原  著
    2014 年11 巻1 号 p. 17-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/03/17
    ジャーナル フリー

     本研究は、外来通院中の壮年期関節リウマチ患者における療養生活の実態とQOLの特徴を明らかにし、生物学的製剤療法との関連性を検討することを目的とした。首都圏の特定機能病院に通院中の関節リウマチ患者に、背景要因、療養上の困難、主観的QOL等に関する自記式質問紙調査を実施、40歳から64歳までの77名を分析対象とした。得られた結果は以下の通りであった。生物学的製剤使用群と非使用群とで有意差のあったものは、入院有無、医療・福祉サービス利用の有無、m-HAQ得点であった。また、職業、診断年数、入院回数に関しては、使用群と非使用群との間で回答のパターンが有意に異なっていた。使用群非使用群とも療養上困難であると高く認知していた項目は、病気進行や将来への不安であった。使用群は非使用群よりも主観的QOL得点が低かった。使用群の主観的QOLとの相関が強かった療養上の困難は、身体機能の低下がもたらす役割遂行困難とそれに伴う心理的負担感であった。以上のことから、看護者は患者が辿ってきた経過や心情を理解し、身体的困難の緩和や周囲への療養負担感の軽減に努め、患者にとって納得した選択ができるよう支援していくことが重要であると示唆された。

  • 鈴木 小百合
    原稿種別: 原  著
    2014 年11 巻1 号 p. 27-34
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/03/17
    ジャーナル フリー

     中小規模病院の中途採用看護師が、入職後から現在に至るまでに困難に感じたことと職場継続の要因を明らかにし、中途採用看護師の職場定着に向けた支援策を検討することを目的に、11名の参加者に半構成的面接を実施し、質的帰納的に分析した。その結果、入職後から現在に至るまでに困難に感じたことには7つのカテゴリーが抽出された。職場継続の要因には8つのカテゴリーが抽出され、【仕事にやりがいを感じる】がその根底にあった。

     中途採用看護師は、環境の違いへの戸惑いや現職場で実施する初めての技術に対する不安を感じており、現職場での初めての体験や未知なことに対しては丁寧な説明を期待していた。上司や同僚からの情緒的支援は職場継続の要因であり、師長は中途採用看護師のこれまでの経験と思いを受け止めながら的確なアドバイスをする必要性が示唆された。中途採用看護師は、他施設での経験があるからこそ現職場での【看護方法に対する疑問】を抱いており、周囲にその疑問を表出できる環境が必要である。中途採用看護師同士で語れる場としてフォローアップ研修はその1つの方法であるが、効果的な研修のあり方については、今後さらに検討することが課題である。

研究報告
  • 岩永 和代, 小竹 久実子, 羽場 香織, 鈴鴨 よしみ, 甲斐 一郎, 高橋 綾
    原稿種別: 研究報告
    2014 年11 巻1 号 p. 35-44
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/03/17
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は喉頭摘出者のQOLとQOLに関連する要因を明らかにし、看護の示唆を得ること、喉頭摘出者におけるQOL研究の課題を見出すことを目的とする。

    方法:Pub Med、CINAHL、医学中央雑誌 Web ver. 5で喉頭切除およびQOLに関する文献を検索し、26文献(英文献25、和文献1)を分析対象とした。そして、QOLを構成する領域である主観的健康感、身体的領域、社会・心理的領域よりQOLを概観し、QOLとQOLに関連する要因について整理した。

    結果:喉頭摘出者のQOLは、疼痛や呼吸困難、摂食機能の障害、会話機能の低下といった身体症状で低下し、活動や社会的な関わりの低下、うつ傾向といった社会・心理機能で低下することが示唆された。そして、コミュニケーション手段、年齢や雇用・経済状態、教育レベル、化学放射線療法併用治療といった個人背景が複合的にQOLに関連していることが示唆された。

    結論:喉頭摘出で喪失した機能を補い、 新たなコミュニケーション手段を獲得できるような援助が求められる。

  • ─がん高齢者と非がん高齢者の共通点および相違点─
    仁科 聖子, 湯浅 美千代, 工藤 綾子
    原稿種別: 研究報告
    2014 年11 巻1 号 p. 45-58
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/03/17
    ジャーナル フリー

     本研究は、独居高齢者が在宅で最期を迎えることを可能にするための訪問看護師の支援を明らかにした。がん高齢者と非がん高齢者の支援の共通性と相違を示すために、在宅独居高齢者が死亡する直前か死亡までに看取りを経験した訪問看護師に研究協力を依頼し、半構造化面接により質的に分析した。研究協力者(14名)から語られた事例は、がん支援群11名、非がん支援群3名であった。独居の非がん高齢者が在宅で最期を迎えるための支援では、高齢者の意思に沿って《高齢者の意思・性格に合わせた生活の質を維持するためのケアマネジメント》を行い、高齢者の《在宅死の決断に伴う不安と揺らぎを緩和する支援》と《在宅死の意思実現に向けてケアチームでの合意形成・緊急時の対応方法の明確化》、《検死や独りで死なせないための高齢者と家族への支援・調整》を行っていた。がん高齢者においても非がん高齢者と類似したコアカテゴリがみられた。非がん支援群の特徴は、《高齢者の意思・性格に合わせた生活習慣による生活の質を維持するためのケアマネジメント》の【経済面にも配慮したケアマネジメント】、《検死や独りで死なせないための高齢者と家族への支援・調整》であった。訪問看護師は、予期しにくい非がん高齢者の死をケアチームの連携によって、高齢者の意思に沿った在宅での死が迎えられるよう調整していた。がん支援群では、《がんに伴う苦痛や症状緩和を優先するケアと他職種との連携》《ヘルパーと家族の不安軽減のための連携・協働と医師との仲介》《看護チームでのアプローチによる対応力向上》ががん支援群のみで示されていた。がん高齢者は、病状の変化が顕著であるため、高齢者の状況に合わせた他職種の連携が不可欠であった。独居高齢者の支援では、非がん支援群、がん支援群に共通して、家族を含めたヘルパーとの連携・協働、看護チームによるチームアプローチが、独居高齢者の終末期を支援するために訪問看護師に求められる機能と考えられる。

  • ─A町骨粗鬆症検診データによる分析─
    齋藤 尚子, 櫻井 しのぶ
    原稿種別: 研究報告
    2014 年11 巻1 号 p. 59-66
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/03/17
    ジャーナル フリー

     骨粗鬆症予防に効果的な保健指導を行う基礎資料を得るために、A町の骨粗鬆症検診データを用いて骨密度と生活習慣の関連を明らかにした。閉経による影響を考慮して、対象者を59歳以下群と60歳以上群に分けて分析した。

     協力が得られた59歳以下群53名、60歳以上群135名を分析した。骨密度には59歳以下群では基本特性の「本人の転倒・骨折経験」、生活習慣の「過度なダイエット経験」、「20歳までの1週間あたり運動日数」が関連していた。60歳以上群では基本特性の「年齢」、「体重」、「BMI」、「閉経期間」、「既往歴」、「本人の転倒・骨折経験」が関連しており、生活習慣との関連はなかった。

     骨密度に関連する要因は年齢により異なり、年齢に応じた対応が必要である。59歳以下群は閉経の影響が少ない年代であるが、生活習慣により骨密度に影響があったため、年齢や閉経の有無に関わらず検診受診を勧奨することや成人期前からの予防も必要である。60歳以上群では骨密度には生活習慣ではなく年齢や閉経期間が関連しており、検診受診を勧奨することにより異常を早期に発見し、確実に治療へつなげることが重要である。

研究ノート
  • 長瀬 雅子
    原稿種別: 研究ノート
    2014 年11 巻1 号 p. 67-73
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/03/17
    ジャーナル フリー

     筋萎縮性側索硬化症やパーキンソン病のような神経難病は医学的な治癒が困難で、患者は重度の障害のために自立した生活が困難になり、生命の危機にたびたび直面する。そのため、神経難病患者もまた、がん患者と同様にスピリチュアルな苦悩を抱えていると考えられる。本稿では、神経難病患者がどのようなスピリチュアルな苦悩を抱えたのかを、彼らの手記を使って明らかにする。分析対象としたのは7人の手記で、病の転換期におけるそれぞれの経験を取り出した。彼らは、診断を受けたときだけでなく、症状の進行時期に繰り返しスピリチュアルな苦悩を経験していた。これらの苦悩は、【人生の意味への苦悩】【将来への予期的な恐怖】【孤立感】に分類された。また、彼らの苦悩への対処は、【生き方の見直し】【希望】【人との繋がり】に分類された。

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