Journal of Hard Tissue Biology
Online ISSN : 1880-828X
Print ISSN : 1341-7649
ISSN-L : 1341-7649
18 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 渡邉 武寛, 中野 敬介, 清水 貴子, 岡藤 範正, 栗原 三郎, 山田 一尋, 川上 敏行
    2009 年18 巻4 号 p. 175-180
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/23
    ジャーナル フリー
    歯科矯正学的治療の免疫組織化学的基盤,すなわち歯科矯正学的メカニカルストレスを付与したマウスの歯根膜組織を用いて,その初期における病理組織学的変化を調べるとともに,骨芽細胞分化関連因子であるRunx2とMsx2の免疫組織化学的発現の変化について展望した。当該の牽引側歯根膜線維芽細胞は,メカニカルストレスを受けた20分後には両者の強い発現があり,この傾向は時間の経過とともに増強していた。24時間後においては,歯根膜線維芽細胞,骨芽細胞,セメント芽細胞に強発現していた。また,ALPの発現も同様であった。以上の所見から,Runx2は初期の骨芽細胞への分化を誘導し,Msx2はその際の促進因子として働く事が強く示唆された。
原著
  • 松田 浩和, 村岡 理奈, 共田 真紀, 中野 敬介, 岡藤 範正, 山田 一尋, 川上 敏行
    2009 年18 巻4 号 p. 181-184
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/23
    ジャーナル フリー
    歯科矯正学的メカニカルストレス付加後に,牽引側において発現するBMPの発現状況について追究した。実験にはddYマウスを用い,Waldo法によって行った。免疫組織化学的にBMP-2-4は,対照群ではいずれも極めて弱い発現であったのに対し,実験群においては20分と極めて初期に強い発現がみられた。これは初期のメカニカルストレスがBMPsの発現増強によってRunx2の発現を促し,骨芽細胞への分化を誘導する事を示すものであろう。
  • 村田 勝, 岡山 三紀, 日野 純, 佐々木 智也, 伊藤 勝敏, 赤澤 敏之, 溝口 到, 有末 眞
    2009 年18 巻4 号 p. 185-192
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/23
    ジャーナル フリー
    口蓋インプラントは歯槽骨へフィクスチャーを埋入しない新しい矯正システムとして1996年スイスで開発された.現在まで,本邦における口蓋インプラントに関する撤去までを含む長期間の臨床報告はない.本研究目的は,口蓋インプラントを使用した矯正患者の臨床統計報告と撤去後のインプラント-骨界面を組織学的に観察することである.対象症例は,歯科矯正治療のため口蓋インプラント埋入を必要とした歯列不正または顎変形症患者43例である.全症例(女性34例,男性9例.手術時年齢:15歳3か月から39歳5か月,平均21歳10か月)にscrew-typeendosseousimplant (Orthosystem®, InstituteStraumann, Switzerland)を使用した.Orthosystem®のマニュアルに従い,フィクスチャーを埋入した.初回埋入時に選択した長さは,6mmが27症例で骨結合率96.3%(26/27),4mmが16症例で骨結合率75.0%(12/16)であった.再埋入症例は5例で2回目の埋入後にすべて骨結合が得られた.全症例の骨結合率は88.4%(38/43)であった.撤去物の非脱灰標本を観察すると純チタン製フィクスチャーと緻密骨の結合がみられ,骨細胞の配列や分布に規則性があり,骨細胞突起のネットワークやオステオン構造が認められた.撤去時に生じる骨欠損部骨面には金属性の異物が付着するため,鋭匙あるいはバーを使用して可及的に除去した.生食洗浄後,骨からの出血状態を観察した後にコラーゲン性マテリアル(テルプラグ®)を填入し,アクロマイシンCMC軟膏を塗布して終了した.感染など有害事象は発生せず良好に治癒した.
  • 村岡 理奈, 中野 敬介, 松田 浩和, 共田 真紀, 岡藤 範正, 栗原 三郎, 山田 一尋, 川上 敏行
    2009 年18 巻4 号 p. 193-198
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/23
    ジャーナル フリー
    熱ショックタンパク質(HSPs)は熱ショックのみならず,メカニカルストレスに対しても発現する。歯科矯正治療は,関連する歯周組織にメカニカルストレスを負荷する。それを受けた後の歯周組織に発現するHSPの状況を調べる事は極めて重要である。そこで今回,我々は,歯科矯正学的メカニカルストレスをWaldo法によってddYマウスの歯根膜組織に与え,その後の変化を病理組織学的ならびに免疫組織化学的に検索した。その結果,対照群ではHSP27と70はともに極めて弱い発現であったのに対し,実験群の牽引側歯根膜組織にHSP27と70の両者の発現増強がみられた。これらの所見は,HSPsは歯根膜組織の恒常性の維持に寄与している事を示唆していた。
  • 岡田 康男, 大窪 泰弘, 〓理 頼亮, 片桐 正隆, 長谷川 仁, 森出 美智子
    2009 年18 巻4 号 p. 199-210
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/23
    ジャーナル フリー
    口腔顎顔面領域の腫瘍には歯原性腫瘍や非歯原性腫瘍があり、また、これらと鑑別を要する疾患にもしばしば遭遇する。これらの手術摘出組織(以下、手術検体と略する)の病理組織学的診断を行う際には、腫瘍の進展範囲、切除断端の腫瘍存在の有無などの正確な評価や類似疾患との鑑別が必要である。そのためには適切な位置で切り出すことが重要である。そこで、2008年4月以降に手術検体のマイクロフォーカスX線CT(以下、マイクロCTと略する)を撮影し、その画像に基づき切り出し、病理組織学的診断を行った症例についてマイクロCT画像と病理組織学的所見を比較し、検討を行った。対象症例は21例。病理組織型別では、扁平上皮癌16例(下顎歯肉9例、上顎歯肉4例、頬粘膜2例、下顎骨内1例)、粘表皮癌1例、エナメル上皮腫1例、歯牙腫1例、智歯の異所性萌出1例および神経鞘腫1例である。腫瘍に対する下顎骨や上顎骨の切除症例18例におけるマイクロCT画像による骨吸収の有無と病理組織学的な骨浸潤の有無は全て一致し、マイクロCT画像による圧迫型の骨吸収所見を示した7例では病理組織学的に6例が圧排型、1例が浸潤型の骨浸潤を呈し、浸潤型、虫喰い型の骨吸収所見を示した7例は病理組織学的に全て浸潤型の骨浸潤を呈し、マイクロCT画像による骨吸収の様式の所見と病理組織学的な骨浸潤の様式の所見はほぼ一致した。下顎管や上顎洞への腫瘍浸潤について比較したところ、下顎管浸潤の有無は一致し、上顎洞浸潤の有無についても1例を除き一致した。歯牙腫症例と神経鞘腫症例では手術検体は線維性被膜を有していたため、また、上顎智歯の異所性萌出症例では、手術検体が骨様硬組織であったため、いずれも内部の把握が困難であったが、マイクロCT画像所見で内部の性状を確認できたことで適切な位置で切り出すことが可能であった。以上より、口腔腫瘍の浸潤・進展範囲を含めた疾患の最終診断は病理組織学的所見によるが、そのためには手術検体の適切な位置での切り出しが重要で、マイクロCT画像の応用が有用と考えられた。
feedback
Top