近年,京浜,中京,阪神等の地区を始めとし,その他の地区においても埋立てによる工業地帯の造成が盛んであり,これらの臨海工業地帯には鉄鋼,石油等を中心とする近代的な工場が続々建設されている。これに伴なつて,原料となる鉱石の輸送には大型鉱石専用船が出現し,原油の輸送に使用されるタンカーはますます大型化し,また,最近では,4万トン級の冷凍式LPG専用タンカーも建造されている。これらの超大型船は,しゆんせつによつて造られた狭あいな水路を,水深の制約を受けながら航行し,直接事業所の構内に接岸して荷役を行なつている。一方,各港とも入港船舶数は年々激増しており,取扱貨物量の増加は,はしけその他の小型船の交通量の増加に拍車をかけ,ますます港内は輻そうしているので,衝突等の海難が発生する危険性は,極めて多くなつている。特に,昨年末,東京,名古屋,神戸,関門等の主要港の航路筋において,相次いで衝突事故が発生し,沈没船舶によつて船舶の航行にかなりの障害を及ぼした。これらは。いずれも港湾の機能に対する致命的な事故にはならなかつたが,船舶の沈没によつて港が閉塞され,或いは,これが原油タンカー等であれば流出した油に引火し,港内一面火の海となるような事態が明日にでも発生しかねないような状況であることを示している。また,港における危険物の取扱量も著るしく増加しているので,荷役中の事故が大災害に発展するおそれも多分にある。このように,港の規模は大きくなりつつあるが,港内の安全確保の面からみると,年々港は狭くなりつつあるような状況であり,衝突,乗揚等の事故防止は勿論のこと,危険物による事故の防止も重要な問題となつているので,以下,危険物に関する港則法上の規制の現状及び問題点について述べてみたい。
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