アニメーション研究
Online ISSN : 2435-1989
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18 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
論文
  • 泉 順太郎
    2016 年 18 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2016/09/07
    公開日: 2023/02/18
    ジャーナル フリー

    数多くの映画がしばしば、正義という概念への懐疑と共に、正義のヒーローを描いている。『009 RE: CYBORG』(神山健治、012)はそのジャンルに属しながらも、少々奇抜な方法によって、非常に明確な映像と音響を介しながら、正義についての別の考えを示す。本稿は、「暴力批判論」(ベンヤミン)や『法の力』(デリダ)を参照することで、その映画内の奇抜さを、暴力の表象を問うているものとして、考察する。この暴力の表象はまた、隠蔽という作用と一体になることで、“正義”という概念を成り立たせる中枢的条件となっている。暴力の表象への問いは、この作品内で、次の2つの主要な映画的表現方法により展開される。1つ目は、“彼の声”についての音響的構成である。それは、聞いた者を暴力的な正義の実行へと強制する。2つ目は、天使に関する視覚的構成である。それは、主人公“ジョー”を、正義の単なる表象から逃しながら“彼の声”との新しい関係を作り出す場所へと、連れてゆく。このような分析に基づいて、この論文は次のように結論付ける。即ち、このアニメーションが描くヒーローの表象は、正義の現前を掲げながらそれを実行することに対抗する自身の力を獲得している。

  • 藤原 正仁
    2016 年 18 巻 1 号 p. 15-32
    発行日: 2016/09/07
    公開日: 2023/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、今 敏のライフストーリーの観点から、今 敏監督の人間像、今 敏監督作品の創造過程、そして、今 敏監督と今 敏監督作品との連関について明らかにすることである。本研究では、アニメーション作品、絵コンテ、日記、ブログ、ウェブサイト、エッセイ、音声解説、記事などの資料調査に基づく質的研究の方法論を採用した。その結果、今 敏は、仕事と仲間とともに、アニメーション監督という職業を通して、アイデンティティを確立させながら、自らを表現しようとしていることが明らかにされた。

    今 敏監督は、絵を描くことによって、想像力を拡張し、創造性に富んだ新しいアニメーションの表現に挑戦し続けた。彼のアイディアは、現実と対峙し、予期しない出来事や偶然の出会いが源泉となっている。とくに、平沢進の音楽と筒井康隆の小説の影響を受けており、これらの世界観は、今 敏監督のアニメーション作品に活かされている。さらに、今 敏監督は、日常生活の中での想像力を作品に反映している。本研究の結論として、今 敏は、自らの人生の意味を探求しながら、アニメーション作品の中に、彼自身の人生のテーマを表現し続けたことが明らかにされた。

  • 野口 光一
    2016 年 18 巻 1 号 p. 33-47
    発行日: 2016/09/07
    公開日: 2023/02/18
    ジャーナル フリー

    これまで日本市場では、国産のCGアニメーションはヒット作に恵まれなかった。しかし2014年は、映画の『楽園追放Expelled from Paradise』や『Stand by Meドラえもん』、TVシリーズの『シドニアの騎士』や『山賊の娘ローニャ』と話題作が公開・オンエアされた。これまでのように国産のCGアニメーションが単発で作品をリリースしていた時代と異なり、作品群が立て続けにリリースされ、CGアニメーションを観る機会と見慣れる環境が集中的に出来上がった。またCGアニメーターの力量の向上により質の高いCGアニメーションが制作され、日本市場にフィットした作品群が登場したと言える。本稿では、日本のCGアニメーション市場の動向を『楽園追放Expelled from Paradise』を中心に分析する。

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