本研究は,後説明効果の生起を検証した。存在が曖昧なものが実際に存在しているという認識(実在性認知)に焦点を当て,説明が説明対象に関する認知に及ぼす再帰的な影響を検証した。加えて,後説明効果の大きさに関わると考えられる変数を明らかにするため,説明に対する自己評価を高く感じるほど,説明対象の実在性認知が高まるという仮説についても検証した。二つの研究において,参加者は,新奇な商品の使用目的や開発の経緯を想像した上で説明し,説明の前後でその商品の実在性を評定した。分析の結果,研究1では,立方体のサッカーボールについて説明した参加者は,説明の前より後で,その実在性を高く評定したことが明らかになった。また,研究2では,説明に対する自己評価のうち,説明内容のもっともらしさが,実在性認知の上昇と関連することが明らかになった。本研究で得られた結果から,後説明効果の生起の背後に想定される認知過程について考察した。
本稿は,高知県黒潮町で展開された防災活動に対して参与観察を行い,Days-Afterの視座から分析を試みたものである。Days-Afterとは,まだ起こっていない災害現象を,もう起こったこととして捉える姿勢・語り方のことであり,災害の発生を確率として捉えるのではなく,将来必ず起こるものとして捉えて語る視点のことである。この視点は,災害の発生が不可避だととらえるものであり,時として災害に対する諦めを引き起こしかねない視点である。しかし,本稿では,逆説的ではあるが,災害の発生を確実なものとして捉えるDays-Afterの視点が,黒潮町の住民を防災に対する前向きな態度に変容させていたことを明らかにした。具体的には,黒潮町の会所地区における防災活動と,黒潮町の住民が作成した津波についての絵画を対象に分析を行った。その結果,南海トラフ地震が将来的に不可避であることを学習する過程で,巨大な津波想定に対する葛藤は生じていたものの,防災活動を通じて住民は自らの生活を振り返り日常生活の価値を再発見し,発災後にも生き残った未来を想起していたことがわかった。
人間関係のスタイルと幸福感:つきあいの数と質からの検討
公開日: 2012/10/25 | 52 巻 1 号 p. 63-75
内田 由紀子, 遠藤 由美, 柴内 康文
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印象形成における手がかりの優位性に関する研究
公開日: 2010/11/26 | 23 巻 2 号 p. 117-124
廣兼 孝信, 吉田 寿夫
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自尊心の高低と不安定性が被援助志向性・援助要請に及ぼす影響
公開日: 2008/03/19 | 47 巻 2 号 p. 160-168
脇本 竜太郎
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会話分析の課題と方法
公開日: 2010/06/04 | 36 巻 1 号 p. 148-159
樫村 志郎
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関係に対する展望が対人コミュニケーションに及ぼす影響―関係継続の予期と関係継続の意思の観点から―
公開日: 2012/03/24 | 51 巻 2 号 p. 69-78
木村 昌紀, 磯 友輝子, 大坊 郁夫
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教育・社会心理学研究
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