事例研究に対して「代表性のある事例なのですか」との批判が投げかけられ,それに対して「極限的な事例においてこそ本質が露呈するのです」と反論する―何度もくり返されてきた定番の論争である。本稿では,極限的な事例という概念に精密な分析をくわえ,以下の結論を導く。事例選択において考慮すべきは,理論的意義がある事例であるか否か,実践的意義がある事例であるか否かである。代表性のある事例であるか否か,極限的な事例であるか否かという区別に本質的意義はない。くわえて,極限的な事例であるか否かを厳密に評価するのは,現実には,きわめて困難である。事例選択手続きを完全にマニュアル化したりせず偶然の出会いを大切にすべきであるが,状況に着目することにより理論的意義がある事例を発見できる可能性を高められる。
セルフディスタンシングとは,自分を出来事から切り離し,第三者の視点を用いて出来事を理解しようとする過程を指す。これまでの先行研究は,セルフディスタンシングが感情調節や自己制御に有効であることを実証してきた。また,文化比較研究によって,内省におけるセルフディスタンシングの容易さやその程度に文化差が存在することが示唆されてきた。しかし具体的にその文化差がどのような文化的要因と関連しているかはまだ解明されていない。本稿ではまずセルフディスタンシングの定義やメカニズムなどの理論的枠組みを述べ,そして感情調節・自己制御・行動変容におけるセルフディスタンシングの効果に関するこれまでの実証研究を概観する。最後に,文化心理学の観点を含めることによるセルフディスタンシング研究の今後の展望を論じる。
人間関係のスタイルと幸福感:つきあいの数と質からの検討
公開日: 2012/10/25 | 52 巻 1 号 p. 63-75
内田 由紀子, 遠藤 由美, 柴内 康文
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返信は早い方が良いのか?―携帯メールやLINEにおける「互酬性仮説」の検証
公開日: 2023/04/27 | 62 巻 2 号 p. 80-93
村上 幸史
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人は他者に視点取得されたと思うとき,共感されたと感じるか:認知と感情を区別した検討
公開日: 2022/04/28 | 61 巻 2 号 p. 71-80
鈴木 雄大, 山川 樹, 坂本 真士
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友人・恋愛関係における関係流動性と親密性―日加比較による検討―
公開日: 2015/12/22 | 55 巻 1 号 p. 18-27
山田 順子, 鬼頭 美江, 結城 雅樹
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印象形成における手がかりの優位性に関する研究
公開日: 2010/11/26 | 23 巻 2 号 p. 117-124
廣兼 孝信, 吉田 寿夫
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教育・社会心理学研究
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